前回「出世料理」として書いたところ、店でそこそこ話題に上がり、また新たに出世料理?を何がしかの本で偶然見かけてしまい、しつこく今回も書いてみる事にした。
ちょっと重複する。
長嶋有という作家の「トマトスープ」を作るにあたり、ベーコン・トマトの他、手短にあった野菜などドサッと入れ、それはりっぱなボリュームのあるスープが出来あがったが、
訪ねてきた友人がおおよそスープには程遠いある種「ゴッタ煮」となったその料理を一目見て、これはスープではない「トマト煮」だ、と一笑に付された。
まっ、想像がつく。
味噌汁にしても豚肉、その他野菜を惜しみなくどんどん入れていくと、それはもう味噌汁ではなく、具沢山のりっぱな豚汁(トン汁)となるだろう。
(ちなみに関東では「ブタ汁」と呼ぶ)
土鍋で湯豆腐であるが、別に豆腐だけではちょっとあいそがない。
軽く白菜シイタケ、カマボコなどもいいもんだ。
が、あくまでも主役は豆腐でなければいけない。
しかし冷蔵庫を開けてみると牡蠣(カキ)や貝柱、エビなども目にかかる。
それらも入れよう。
この際ネギも・・・と、これまたどんどん入れていくと、それはもう湯豆腐を通り越し、豪華なよせ鍋に格上げされる。
という事になる。
ようするに「出世魚」だけではない、料理も「出世」する、という話を前回書いた。
それから先日吉行淳之介の随筆に目を通していたところ、貝の話が出てきた・・・。
バカガイであるが、そのまま殻つきでは「バカガイ」
それをむき身にすると「青柳」(あおやぎ)
ニュッと出した舌(足)を引っこ抜き、素干しにすると「姫貝」
それに味を付け、乾燥させると「桜貝」
とまあなんと四段階に、まさにりっぱに「出世」するではないか。
こちらはシラス漁「湘南」の記事のおり載っていた。
シラスはマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシの幼魚とのこと。
採りたてをそのまま生で食べると「生シラス」
天然塩を使ってゆで上げると「釜上げシラス」
それを天日で干すと馴染みのある「しらす干し」
さらに乾燥させると「ジャコ」
とまあ、こちらも見事に四段階とりっぱに出世する。
が、しかし先の「桜貝」にしろ「ジャコ」にしろ今からもっと他の料理へと利用、発展していく。
まぎれもなくそれらを「出世料理」と称するに相応しいのではないかと思うのであるが、皆さま如何だろうか。
ところで今回もそうであるが何がしかの本、新聞等から引用、もしくはヒントを得て書くこともある。
その本であるが、最近はほとんど新刊を買う事はなく、図書館にお世話になっている。
何年も県立図書館を利用していたのだが、先日より市立図書館も利用するようになったのだが、何故か「貸出期間」が違う。
県は三週間だが、市の方は二週間と短い。
何故だろう?。
市立図書館の方が利用者が多く、回転をよくしようとしているのだろうか・・・。
先日何とか全集の一冊、千ページ以上あるため二週間では読み切れず、読みたい一編を読み残してしまった。
しょうがないので返しがてらそのタイトルの入った別バージョンを借りてきた。
ともあれ新聞は情報源として非常に大切なものだが、本は色々な事柄、知識を楽しませながら、かつ深く教えてくれる。
本は「本とに便利」である。