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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

出世料理

長嶋有という作家がいる。
芥川賞作家らしいのだが、たまたまこの作家の作品を読んだ事はない。
先日新聞のコラムを目にし、これは話としてちょいと面白いと思い、早速ネタとして拝借しながら書いてみる事にした。

文面からして、独身で一人住まい(だと思う)。
料理(自炊)など一切した事がないというその作家。
最近太ってきたので「スープダイエット」なるものがある、という事を耳にし、至って簡単そうだ。早速作ってみる事にした。
ベーコンの細切りをちょっと入れ、コンソメスープを作ってみた。
それなりに旨い。
しかし、何か物足りない。
それに何となくこれだけではさみしい気がする。
ここはトマトスープにしよう、という事になった。

コクを出すために鶏肉を入れよう。
玉ねぎのスライスも入れると旨そうだ。ピーマン、そうだ人参も入れよう。
たまたまあったマッシュルームの缶詰も入れよう。
そして最後、主役のトマトをぶつ切りにし、ドーンと入れる。
しばらくして味を見てみる。
「う〜ん、旨い!」それはりっぱな美味しいトマトスープが出来あがった。

そこへタイミング良く友人がやってきた。
さっそく出来たてのトマトスープを振る舞おう、とすると友人は、もともと不審げではあったが「ありがとう」と言いながらその鍋を覗き込むと、ほとんど叫ぶように、
「ゲッ!、こっ、これはスープではない、煮だ!。トマト煮だ!!」と。

そうです。スープに「具」を入れすぎるとそれはスープではなく「煮」になるのです。

たとえばジャガイモの味噌汁を作ったとしよう。
それに玉ネギ、コンニャクなど入れてみよう。ついでに人参、大根もよい。ゴボウもいいかもしれない。最後豚バラで〆てみよう。
それはもはや味噌汁ではなく、りっぱな「豚汁」に格上げ?されるのだ。

豆腐を買ってきたとする。
冷や奴で一杯のつもりが、まだ少々肌寒い。
そこで土鍋に入れ湯豆腐で、のつもりが、白菜をいれてみた。ついでにネギも。
できたらシイタケ(あればマイタケも。これは個人的に好きだ)この際、エビ・イカ、貝柱もなかなか良い。
それにみりんと醤油で味をつけよう。
もともと「冷や奴」のつもりが「湯豆腐」になり、最後「よせ鍋」という、それは具沢山の美味しい、おいしい料理に「出世?」したのです。

まだまだ色々あるでしょうが、これらを「出世魚」ならず「出世料理」、と呼ぶ事に致しましょう。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。