ヨシムラ ヒデユキ
ROBROYに来始めてから20年をチョイと越えるくらいになる。
先日「不惑」を迎えたばかりなので、ちょっと計算が合わないかもしれないが、まぁ世の中そんなものである。
まだ細身で初々しかったあの頃は、他に特に趣味も無かったせいもあって、週に6回は店に顔を出していたものだが、年齢相応以上に(心も身体も)ふてぶてしくなった今では、下手すると年に6回くらいのペースである。
出不精はデブ性になって加速したと言う訳。
そんなに頻繁に顔を出していたからには、よほど酒が好きなのかと思われるかも知れないが、別段飲めなくても全く困らない。
元々アルコールに弱い性質だし、家でも全然飲まないので、「ROBROYに来ない」=「飲んでいない」と言ってしまっても間違いではない。
ストレートで飲っている訳も、水割りをかぱかぱ飲むより、ストレートをちびちび甞める方が悪酔いしにくいと発見したからである。
それでも店に顔を出すのは、自称「酒好きではなく酒場好き」な所以である。
そんな「酒飲めない」自分でも、心底から「あぁ、酒が欲しい!」と思った事がある。
「阪神淡路大震災」、あの大災害の時だった。
仕事の関係で、地震発生して数日後、現地入りして色々な支援をしていた時のこと。
仮設の本部で現場から入る連絡をまとめ、不定期に車のシートで仮眠をとり、余震が来れば目を覚まし、朝になったら車の下の地割れの状況を確認して「まだ大丈夫かな…」と自分に言い聞かせ、また胸が潰れるような報告を書き留めて…。
かなり精神的に来る状況だったんだと思う。
当時はそんな事を思う暇も無かったが。
「体力的に疲れた時には甘い物が、精神的に疲れた時にはアルコールが」特効薬になるらしいが、まさにこの時は後者の状況だった。
もういっぱいいっぱいで、周りの人間関係もとげとげしくなってきた頃、上司が「嫁さんが送ってきた。内緒だぞ。」と言って、コップにほんの一口ほどの酒をくれた。
バーボンじゃ無かったな。
確か、オールド・パーだったように記憶している。
これがもう、劇的に効いた。
メリメリと音がするほど活力が出た。
身体中に花が咲いたような気分。
「精神的疲労には酒が効く!」と言うのを、身をもって体験した。
いや、ホントに効くのだ。
翌日、久々に休憩を貰って近所を歩き回ってみた。
将棋倒しになった家並みや、ぺちゃんこに潰れたガレージなどを見ながら歩いていくと、一軒の酒屋を発見した。
駄目元で聞いてみると、「ほとんど割れてしまって、こんなのしか無いが」と、キャップが半分割れたアーリータイムスを入手出来た。
これでもう、ストレスに潰されることもないぞ…とホクホクして仮設の本部に戻ったら、例の上司に「ご苦労さん。明日交替が来るから一旦帰れるぞ」と…。
ボトルを抱えて呆然としたものだ。
結局、アーリータイムスは未開封のまま、金沢に戻って来た。
家で飲んだかって?前述の通り、家では全然飲まないのだ。
その後、どうしたんだったかなぁ…。
現在は(心も身体も)ふてぶてしくなったので、あの時のように「酒が無いと癒せない精神疲労」とはほとんど無縁である。
替わりに太くなった身体の為に、ダイエットも兼ねて自転車に乗り始めた。
「リカンベント(仰向けになった)」という、そのちょっと変わった自転車は乗ってるだけで楽しくて、アッと言う間に6Kg痩せた…が、「やっぱり身体が疲れた時は甘い物だな!」とパクついたおかげで、またみるみる元に戻りつつある。
せめて天気の悪い日は自転車に乗らず、ROBROYに顔を出そうと思う。
(酒のカロリーって…いやいや、考えないことにしよう。どうせ弱くて量は飲めないんだし。)
今年はまだ、今のところ「月イチ」ペースで顔を出せている。
さて今後はどうなることやら…ともかく自分のボトルの場合は「マスターが飲む」量の方が多いのは確かなのだが。