西川正一郎
酒が飲める。これほど素晴らしいことはない。これほど楽しく幸せなことはない。
毎日毎日、来る日も来る日も酒を飲む。そして酔っぱらう。少しだけ酔っぱらう。相当に酔っぱらう。
ロブロイストの皆さんにとっては、ごく普通の出来事であるに違いない。
どうでも良いことではあるが、ある疑問を抱いた。酔っぱらうというのは、体の中でどんなことが起きているのか。
そして、ロブロイストとそうではない人はどう違うのか、と。
ロブロイストの皆さんにしたら常識なのかもしれないが、私が今持っている知識では到底わからないので、
インターネットという武器を使って調べ、分析してみた。
まず、「酒」。これはまさしくアルコール飲料のことである。主成分はエタノール。構造式では、
H H
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H-C-C-O-H
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H H
と表される。
元素記号を見ればわかるとおり、水素原子、炭素原子、酸素原子から成り立っている。と言うよりも、
水素と炭素と酸素からしかできていない。極論を言えば、水素と炭素と酸素さえあれば酔っぱらうと言うことなのだろうか?
いや、どうもそうではない。炭素と水素、そして酸素の組み合わさり方が重要なのだ。組み合わさり方の妙によって、
我々を酔っぱらわせてくれる夢の液体に変化する。
仮に、
4 6
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3-1-2-8-9
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5 7
と、上記の構造式に数字を当てはめてみる。
現在までに118個の元素が見つかっているので、「1」の場所に炭素が来る確率は、118分の1。
さらに「2」の位置にも炭素がくる確率は118分の1×118分の1で13,924分の1。
(それぞれの位置に絶対に当てはまらない物質があるが、あくまでも確率と言うことで深くは考えないように)
さらにさらに「3」の位置に水素がくる確率は13,924分の1×118分の1で、1,643,032分の1。
「4」の位置に・・・・と計算していくと、9番目まできっちり当てはまる確率は、なんと、
443,544,389,151, 330,000分の1(44京3544兆3891億5133万分の1)となる。
天文学的な確率でエタノールとなってくれた彼ら(彼女ら?)には感謝してもしきれない。
このエタノールが、様々な味(味の要素も天文学的な数字であることは明白だ)と組み合わさり、
もはや想像もつかない確率(ざっと計算して89桁分の1にもなる)で成り立ち、我々の口から体内に流し込まれる。
それがどう、「酔い」の作用を引き起こすのか。流し込まれた「生命(いのち)の水」は胃で20%、小腸で80%が体内に吸収される。
そして、血液を通じて肝臓に入り、アルコールデヒドロゲナーゼによってアセトアルデヒドに変化する。
この時、処理しきれなかったアルコール分が血液とともに体中の血管を駆けめぐり、細胞という細胞に浸透する。
当然脳細胞にも入り込み、脳の外側から徐々に内側へと浸透していく。
ロブロイストが愛してやまない「酒」の真骨頂が、脳にアルコールが入り始めた正にその瞬間から始まる。
ラウンド終了のゴングがいくら打ち鳴らされようが、試合終了のホイッスルが吹かれ、観客がピッチになだれ込んでこようが関係ない。
マイペースでアルコールをちびちびと、いや、ぐいっと脳に送り込む。一杯空けるたびに脳にアルコールが染み渡っていく。
血中アルコール濃度が0.15%で大脳新皮質、視床、視床下部、下垂体に、0.3%で大脳辺縁系、小脳に、0.4%で海馬に「生命の水」が到達する。
アルコールは向精神薬の一種とも言われ、弱い毒性もある。この毒素が脳細胞の機能を低下させ、酔っぱらいが完成する。
普通の人は、ウイスキーボトル3分の1強で血中アルコール濃度が0.3%になり、いわゆる悪酔い状態となる。
人によってはもっと酷いことになる。しかし、ロブロイストはどうだろう。おそらくは酔っぱらっているに違いない。
しかもほろ酔いという状態でもない。単にお酒を楽しく飲んで酔っぱらっている人、と言うだけであろう。
いったい何が違うのか?
それは「気持ち」ではないだろうか。「こころ」であり「心意気」ではないだろうか。酒や酒場を思いやる気持ち。
酒や酒場を愛するこころ、酒や酒場を楽しむ心意気である。それは精神論であって根拠は無いという人もいるだろう。
確かに現在の科学技術では証明できない。映画の中の話ではあるが、人間は生命活動が無くなると21グラムだけ軽くなると言う。
立証されていないが、実際そうらしい。「命」「こころ」が生きている中で何らかの影響を与えているのは間違いない。
直接このことを肯定する意見ではないが、ノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進博士が数年前の講演会でこう言っていた。
「今世紀末には「こころ」の仕組みが解明され、「こころ」の的確な治療が可能になるだろう。
性格なども簡単に変えられるようになるはずだ」、と。さらに、最近ではこう言っている。
「いままで哲学や心理学の分野として捉えられてきたものが、今後は脳科学の分野で研究が進むだろう。」
ロブロイストの生態が科学的に解明される日は近い。
さてこのロブロイスト。一体どのくらいの人数が存在するのだろう。
HP内のBBSとロブロイストの日々で現在確認できるのが35人。
消えていった書き込みもあるので、ざっと55人ぐらいだろうか。(ゴジラ松井の背番号にあやかってみた)
閲覧者は、HP開設約2年で約3万500HIT。書き込んだ55人は少なくとも2日に1回は見に来ているであろう。
(365日)×(2年)÷(2日に1回)×(55人)= 20,075HIT。30,500HIT中20,075HITが過去に書き込んだ人で踏まれている事になる。
(30,500HIT)−(20,075HIT)=10,425HIT。
これが閲覧のみの人が踏んだ数となる。
月に2回見に来る人をx人、合計20回程度見に来た人をy人、合計2回程度見に来た人をz人として、y人をx人の5倍、z人をy人の10倍と(常識的に)勝手に仮定すると、
(36ヶ月×2回)x+(20回)y+(2回)z=9,925(72x+20y+2z=10425)5x=y10y=zと言う方程式ができあがる。
これを解くと、x=38.327(人)y=191.636(人)z=1916.360(人)となる。
ここはあえて、zの人数はロブロイストに入れないことにする。
HPを楽しんでみている人、お店に一度でも行ったことのある人は、閲覧2回というのはあり得ないと思うからだ。
また、あり得ないと信じたい。
すると、55人+38.327人+191.636人=284.963人。約285人がロブロイストと言うことになる。
現在の世界の人口が63億人であるので、地球上の22,992,701人に一人の割合でロブロイストが存在する。
ロブロイスト足ることが出来る確率は、今のところ2千2百万分の1なのだ。パーセンテージで表すと、0.0000045%となる。
(「ロブロイスト」はある限られた条件下の判定であって、「人」そのものをカテゴライズするもではないと言うことを注意されたい)
私自身もロブロイストとして判定してしまったわけだが、はっきりって自信はない。呑ん兵衛の掟を守るべく精進の毎日である。
呑ん兵衛の掟が科学的にも素晴らしいものだと証明されるのを待ちながら、
2千2百万分の1と44京3544兆3891億5133万分の1の組み合わせに感謝しつつ、今日も楽しくロブロイで飲むことにしよう。
ふと思った。私が数ある店の中からロブロイを選ぶ確率はどれくらいなんだろう。
心の仕組みが解明される今世紀末には、より確かな数字が出るだろう。