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(C)2003
Somekawa & vafirs

ホワイトちゃんと私

K・真由美

今日は、私の大切なお友達、ホワイトちゃんの話をしましょう。

ホワイトちゃんは6年程前(だったと思う)我が家へやってきた。 我が家 は飲食業で、魚を仕入れている為、発泡スチロールの箱に紛れてきたらしい。 ある日我が家の外壁を這っているホワイトちゃんを見つけた。カラダは一センチに満たなかったと記憶している。
目のうすい人にはゴミにしか映らなかったことだろう。プラスチックの飼育ケースに入れはしたが、すぐに死ぬと思っていた。
あれから6年の月日が流れ、ホワイトちゃんは幾度となく脱皮を繰り返し、成長し、私と心を通わせるまでになった。 愛しい存在・・・・。それは、海のものとも、川のものともわからない、カニ・・・・。
私はカニが、脱皮をすることすら知らなかった。脱皮の瞬間には、いまだにお目にかかれずにいるが、とにかくキレイに脱ぐ。 実物と全く同じ殻を・・・・。
どこから、どうやって脱ぐ?こんな町中の台所の片隅のケースの中で、実に神秘的な行為。 そんなことに度々感動している。おまけに水道水の中で生き続け、カニ風味のかまぼこが大好物ときている。

食事は2,3日に一度。たまに忘れて一週間も与えずにいると、岩の上に上って私を待っている。
 「ホワイトちゃんごめんね〜忘れてたよ〜」と、私がカニかまぼこを垂らすと待ちきれずに、両方のハサミを高々とさし上げる。 慌てて私の指を挟んで、口にもっていったりする。そしてすごい勢いで、私の手からカニかまぼこを奪う。小さな小さな口に運ぶ。 欲張りなホワイトちゃん、片方のツメで口に運び、ほうばりつつ、もう片方のツメでまた私におねだりしたりするのだ。 両手にカニかまぼこを挟んでいる。手渡しでえさを食べるカニ・・・・。私は、カニと心が通じ合っていると確信する。
脱皮を繰り返すたび、ひとまわり大きくなり、今では8センチ位になった。足の一本一本に肉がつき、チクチクと毛まで生えている。何年か前、一匹(一パイ)では淋し かろうと、沢カニを三匹投入してみたが、やはり水道水では、生き残れず、すぐに死んでしまった。

それ以来、ずっと独り(一パイ)で生きてきたホワイトちゃん。こんな小さなカニと、心が通い合う。 なんだか、とてもささやかだけど、無性に可愛い。私と二人だけの世界で生きている。そんなカニの一生もある。 性別もわからぬカニのホワイトちゃんの存在が、私を癒してくれるのだ。 ・・・・・と云いつつ、いつかカニの恩返しが、くるぞ!くるぞ!と、こっそり期待している腹黒いわたしなのである。

        END・・・・・

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