熊谷卓也
私は現在富山県砺波市に単身赴任中の身である。
砺波市は散居村という独特の景観をもった土地であるが、簡単に言えば田圃だらけのいなかである。
私はその田圃の一角に立っているアパートを現在の仮住まいとして生活をし、もう2年と半年になる。
このアパートの私の部屋に、実は私と同居している女性がいる。
というよりは私の方が彼女より後にこのアパートの部屋に引っ越して来たので私の方が押し掛け亭主という事になる。
その彼女は実は人間ではなく、コウモリである。
彼女を初めて見た時は少なからず驚いたものである。
仕事を終え自室に帰り、何となく天井から視線を感じるのでふと見上げてみたら天井に彼女がぶら下がっていた。
戸締まりはしっかりしているのに、いつどこから入って来たのか当時は皆目見当もつかず、謎は深まるばかりであった。
いろいろ調査を行った結果、直径5cm程の換気扇の穴から彼女が部屋に出居りしている事が判明した。
実は発見当時、このコウモリは雄なのか雌なのかが分からなかったのであるが、確かコウモリは鳥では無くほ乳類の筈、
ほ乳類であれば股間を見れば性別が判別出来る筈!という事で早速捕まえ、股間をまじまじと観察した結果、
ぶら下がっているものが無いという事が判明し、女性に違いないという判断に落ち着いた次第である。
始め、私は彼女を金色に塗って願い事でもかなえてもらおうかとも思ったが、いやいやそれでは動物虐待になると思い直し、
現在は放置し部屋の出入りを自由にさせている。帰った時に居たり居なかったりするのであるが、あまり気にしない事にしている。
ひとつ困るのは糞を床に落とすので、出来ればトイレの天井にぶら下がって欲しいものだ、と思いつつ
同居生活を現在も楽しんでる私なのである。