西川正一郎
前回、前々回に引き続き、テレビカメラマンである私が独断と偏見で選んだ、テレビに関する用語集です。
その1、その2の冒頭でもお断りいたしましたが、もしかしたら、書き進めるうちに業界全体を敵に回したり、
守秘義務違反にはならないとは思いますが、グレーゾーンだったりすることも記述してしまうかもしれません。
問題が発生した際は速攻削除していただきたいと思っております。
なお、用語集とは言いながら、語数も少ない上に「あいうえお順」でもなく、客観的解説がなされていない可能性があることを、
さらに重ねてご了承いただければと思います。
ほん
「本」。
映画では脚本のことだが、テレビでは台本のことを指す。
厳密には2種類有り、「アナ台本(アナウンサー台本)」と「進行台本」が使い分けられる。
アナ台本は一言一句しゃべり言葉が書いてあるもので、しゃべり手はそれに準じて進めていく。
進行台本はしゃべり言葉はほどほどで、そのときの状況を進めるためのことが書かれている台本のことである。
例えば
「アナ台本」
アナ:みなさん、こんにちは。今日はすてきなゲストをお迎えしています。
ゲスト:こんにちは
アナ:こんにちは。さて、今回の新しい作品ですが、素晴らしい出来ですね!
ゲスト:ありがとうございます。(作品の特徴を一言お願いします)
アナ:(それを受けて)では早速ですが・・・・・ 等々
「進行台本」
アナ下手板付き
アナ:こんにちは
ゲスト上手入り
ゲスト:こんにちは(以下掛け合い)
作品センターへ
アナ・ゲスト掛け合い
Qワード「早速ですが」で作品捌け・・・・・ 等々
わかりにくいが、上記の感じと言うことである。
撮影に関しては全てに全力を投じる事が必要だが、私の場合、個人的な理由で集中力が持たないので、
ここぞの瞬間に向けて鋭気を養いつつ、過不足なく撮影することにしている。
そのために、両方の台本を完璧にでは無く、雰囲気で理解することが大事だと思っている。
もちろん言い訳である。
以前、お笑い長寿番組の笑○で、司会の○○さんが手を挙げてもいない○○さんを指名してしまったのは、進行台本に注意が行きすぎたあまり、
MC台本(アナ台本と同意)を疎かにしてしまった結果と勝手に推察している。
Qワード
「きゅーわーど」。
キーワードと同じ。
この言葉が出たら、次のセットを準備するなどと言った「きっかけ」の言葉。
上記のように「早速ですが」や「なるほどねー」など、自然な言葉を設定しておけば、「じゃあ次をお願いします」と言うよりもオシャレに場面転換などができる仕組み。
あまりに自然すぎて聞き逃すと、各部署のスタッフがドキドキすることとなる。
下手
「しもて」。
テレビ画面の左側のこと。
劇場、ホールなどでは客席に座って舞台の左側のことを言う。
右側は「上手(かみて)」である。
そしてAKBでもお馴染みの「センター」は言うまでもなく真ん中のことである。
出演者の並び順にそれほどこだわる必要が無い限り、偉い人やゲストが「上手」、下っ端やホスト側が「下手」となる場合が多い。
手話通訳が入る番組などでは、多くの場合テレビ画面の右下に手話の映像が挿入されるため、偉い人やゲストを「下手」に置くこともある。
ただし「上手」と「下手」に明らかな上下関係を感じたことはない。
一方「センター」は確実に「センター」であることが要求される。
カメラの設置場所や、舞台装置などは多くのケースで「センター」を基準に考えられるため、少しでもずれると見た目に違和感が出てしまう。
ごく希に、右と左の概念が薄く、茶碗持つ方とお箸持つ方、制服の名札がついている方とそうじゃない方と言った風に左右を認識する人がいる。
そういった人が舞台関係者だった場合、道順を教えるときには「次の角を上手に行って、3本目を下手です」と教えるのが親切である。
ちなみに私は方向音痴のため、「その角を東へ」と言われても対処する自信がない。
まあ、それはさておき、上手・下手・センター如何に関わらず、出演者が動かずにその場所にとどまったまま物事が始まる状態を「板付き(いたつき)」と言う。
「板付きは面白くねぇーなぁー」とのディレクターの一言で、「フレームイン」(今回は説明割愛)になったり「ズームバック」(同じく割愛)になったりする。
芸人の場合、得てして「出落ち」(すんません、割愛、、、、)になるケースが多いので、お互いに注意が必要である。
「板付き」ではなく出演者に何らかの移動が伴う時は、最終的に出演者が立つ場所に目印を付けておく必要がある。
画面におけるセンターをずらさないためである。
この目印のことを「バミり」と言い、「バミり」のために色付きのガムテープなどを地面に貼る行為を「バミる」と言う。
前述の囲み取材の時(出演者に来てもらうケース)には「バミり」をしっかりとしておく必要がある。
またまた次回に続きます!!!