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Somekawa & vafirs

『役に立たない用語集・そのA』

西川正一郎

前回に引き続き、テレビカメラマンである私が独断と偏見で選んだ、テレビに関する用語集です。
その1の冒頭でもお断りいたしましたが、もしかしたら、書き進めるうちに業界全体を敵に回したり、 守秘義務違反にはならないとは思いますが、グレーゾーンだったりすることも記述してしまうかもしれません。
問題が発生した際は速攻削除していただきたいと思っております。
なお、用語集とは言いながら、語数も少ない上に「あいうえお順」でもなく、客観的解説がなされていない可能性があることを重ねてご了承いただければと思います。

夜討ち朝駆け

「ようちあさがけ」。
特ダネをつかんだり情報の裏をとるため(情報の真偽を確認するため)に、しかるべき(発言に責任を伴う)取材対象者に密着すること。
予告やアポなしに行われ、文字通り、取材対象者が夜自宅へ帰ってくるのを待っていたり、朝の出勤前に自宅前で待ち構えている事が多い。
もちろん相当なレベルで嫌がられたりするが、若手報道記者の登竜門でありスキルアップにも繋がるといわれている。
社会的に地位のある人が狙われる傾向にあるが、事件当事者(被害者含む)に矛先が向くこともしばしばある。
その際は「きちんと取材対応しますので、こういう事はやめて下さい。 幹事社の連絡先を教えていただければ、こちらから追って連絡いたします。 今回はこれでお引き取り願えればと思います。」と言えばよい。

ぶら下がり

「ぶらさがり」。
スポーツの試合終了後にチームの監督などに纏わり付いて、歩きながら行う取材活動のこと。
国会議員などに対しても、車を降りてから建物に入るまでの間に行われることが多い。
担当者(担当記者)のみで行われることが通常だが、希に撮影を伴う「ぶら下がり撮影」が重大案件の時に発生し、それはそれはもう混沌とした状況となる。
押し合いへし合いになっても、幸い私はフィジカル面で負けることは少ないが、対象者の歩くルートを予想し間違ったときは当然後手に回ることとなり、映像として他社の記者やカメラマンしか写ってないと言った悲惨な状況に追い込まれる。
瞬時の状況判断と、他人を蹴落としてでもと言った意地悪根性が成功のガキとなってくる。
私はしたことがないが、後ろ向きで速く歩く訓練も怠ってはならない。
「ぶら下がり」は双方(取材対象者と取材者)ともに移動しながら行うが、その途中で足を止め一旦静止した場合は「囲み(かこみ)」と言う状況になる。
「囲み」取材は「ぶら下がり」から派生する場合と、混乱を避けるために元々設定される場合とがある。
元々設定される場合は、取材陣が並んで待っている所まで取材対象者に来てもらって、話を聞くと言った状況である。
現場での混乱は少ないが取材対象者の協力が必要となってくるため、状況は限られたものになる。
最近、ニュース番組において、首相官邸からの生中継の際、レポーターである記者が「このあと首相が囲みに応じると言うことです」とコメントしており、見ている人のどれくらいがわかっただろうと感じたことがあった。
普段使っている言葉ではあろうが、極力使用しない方が良いと思った事案である。

頭撮り

「あたまどり」。
内容非公開の会議などにおいて、冒頭部分だけ撮影が許可されること。
首相官邸で行われる閣議はその代表例である。
ニュースなどでよく目にする閣議室の前室に座っているだけの閣僚の映像が、その「頭撮り」映像になる。
1分程度の時間しか与えられず、担当カメラマンは早朝から順番をつき、許可が出たら部屋にもんどり打って入り、怒濤のように撮影するという、実際に放映される映像とは裏腹に心拍数の上がる撮影である。
このほかにも、裁判所での法廷内撮影がある。
裁判自体は公開されるが、撮影・録画・録音は禁止されている。
法廷内撮影はテレビカメラ、スチールカメラ1社1人ずつの代表撮影形式(テレビ局、新聞社それぞれがローテーションを組んで順番を決めており、撮影終了後は速やかにコピーして各社に分配する)で行われ、裁判長が着席した後の2分間が撮影時間として与えられる。
カメラマンは裁判長入廷前に係官により法廷内に案内され、機材の調整を行うことが可能である。
裁判長着席後に係官がストップウォッチを押し、時間計測が始められたことを告げられ撮影開始となり、2分経過時点で終了の旨を告げられ退廷となる。
現在は裁判員裁判の法廷内撮影が多くなっているが、裁判員は非公表のため撮影終了後に入廷となる。
実際の裁判は、裁判官と裁判員が入廷し速やかに開廷されるが、法廷内代表撮影がある時は、裁判長着席時点より先に手続きを進めないため、撮影中は時間が止まったかのように不自然な状態になっしまう。
ニュースなどで、まっすぐ正面を向いているだけの裁判長の顔がアップで映し出されるのは、このためである。
また、コンサートなどの場合は、最初の一曲のみと言った指定か、(冒頭ではないが)アンコールのみということもある。
現代ではアンコールも予定の一つと考えて良さそうだ。

またまた次回に続きます!

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