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Somekawa & vafirs

『役に立たない用語集・その@』

西川正一郎

私は20年以上カメラマンとして、テレビ業界に携わってきました。
裏方ではありますが、いろんなことを経験させてもらいました。
そして、他の業種やジャンルなどにも共通すると思いますが、テレビ独特の言い回しや表現がたくさんあることに気づかされます。
そこで、私のもてる知識の中から、これはと思える用語などを解説してみたいと思います。

もしかしたら、書き進めるうちに業界全体を敵に回したり、守秘義務違反にはならないとは思いますが、 グレーゾーンだったりすることも記述してしまうかもしれません。
問題が発生した際は速攻削除していただきたいと思っております。
なお、用語集とは言いながら、語数も少ない上に「あいうえお順」でもなく、客観的解説がなされていない可能性があることをご了承いただければと思います。

押す

「おす」。
時間が当初の予定よりも多くかかってしまうこと。
もはや殆どの人に通じる用語。
対義語は「引く(ひく)」。
生放送中に「押し」た場合、リカバリーするには知恵を絞ってあの手この手を使うが、「引い」た場合のリカバリーはそれほど深刻ではないため、 「引く」は「押す」よりも使われる頻度が非常に少ない。
ロケーションにおいては「押す」ことは日常茶飯事である。
例外を除き取材相手先に多大なる迷惑をかけながら、「押し進行」で撮影を進めることとなる。
13時に行きますと約束していたにもかかわらず、14時や15時、あろう事か17時過ぎに到着して取材すると言った感じである。
ロケ中に「引い」た場合は、休憩もしくはサボリにあてられる。
ロケ終了時まで「引き進行」で進めたがる現場責任者(ディレクターやプロデューサーなど)は、出演者やスタッフから嫌われる傾向にある。

Bプロ

「びーぷろ」。
Aプログラム(本命の構成案)が、何らかの理由で完遂できそうにないときに使用するBプログラム(代替え案)のことをいう。
晴れの天気での撮影の予定が、降雨などで全く違った状況になってしまうときに準備しておくことが多い。
たとえばキャンプでのアウトドアクッキングの撮影や紅葉の撮影の時である。
この場合「雨プロ」という使い方をすることもある。 ごくまれに、飛行機の欠航などで出演者や主要スタッフの到着がままならない場合、Cプロ、Dプロとなってしまうことも希に発生する。
そうなった場合、番組の体をなさなくなることが多いため、できる限り避けたいものである。

階段編成

「かいだんへんせい」。
野球やスポーツ中継などが予定の時間を超えてしまったときに、送出側(いわゆる放送局)で行う放送時間の変更のこと。
「一部の地域を除いて、放送時間を延長してお送りします!」と実況アナウンサーが元気よく告知するが、見ている側は「そりゃそうだろ」としか思わない。
通常、5分ごとの延長が設定されており、30分の延長が想定されていれば7通りの編成を作っておく必要がある。
延長放送開始の8分前に延長するかどうか決定され、放送順序や放送時間などの送出プログラムを技術担当者が書き換えることになる。
その編成の組み合わせを書いた表の図が階段状に見えるため、「階段」という表現が使われるらしい。
8分もあればと思いがちだが、放送事故を起こさないように様々な手順があり、結構ギリギリの設定で、担当者にとってはシビれる状況である。
ちなみに、その後に放送される番組(主に23時台や24時台のニュースなど)の担当者は、押しただけ単純にそれだけ帰る時間が遅くなり、たいていの場合、深夜であることから切実な問題である。

ガセネタ

「がせねた」。
嘘の情報、または捏造された情報・記事のこと。
これもほぼ浸透していると思われる。
最近ではiPS細胞の、森○氏による虚言を元にした記事が記憶に新しい。
対義語は「マジネタ」や「ガチネタ」があるが、本来、信憑性のある記事や情報、事実を扱うのが基本中の基本であるため、「マジネタ」や「ガチネタ」といった言葉が使われることはまずない。
また、「ネタ」とは「種」を倒置読みした造語で、情報そのものや記事の内容のことを指す。
番組名にも使われている「特ダネ」は「特別な種」の略であると思われる。
「特ダネ」とは他社が持っていない有意義な独自情報などで構成された記事や放送内容のことを指し、視聴者や読者ことさら同業他社から注目を浴びる。
「特ダネ」をつかんだ担当者は、日頃の苦労が報われることとなる。
しばしば「すっぱ抜いた」という風にも使われる。
全く逆の事例に「特落ち(とくおち)」と言うものがあり、自分もしくは自社のみが情報を掴めなかった時に起こる出来事である。
これは最もやってはいけないことであり、担当者は上司から人間以下の扱いをしばらくの間受けることになる。
「特落ち」を防ぎつつ「特ダネ」と「ガセネタ」をうまく分析できる人材が求められている。

次回に続きます!

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