もはやすっかり定着したというか、日本の文化ともなりつつある100円ショップについてちょっと書いてみよう。
前もって断っておこう。今回は物の値段について「消費税」という単語とそれに生じる「数字」も省くことにする。
まずは今このとき使っている老眼鏡はもちろん100円ショップで買ったものだ。所詮100円、5〜6個買いそれぞれ動きそうな部屋に無造作に置いている。実に重宝している。店にも2〜3個置いてある。すぐに壊れるであろうという予測のもとに余分に買ったが見事に裏切られ、それから10年近く経つが一つたりとも壊れない。実にしっかりしている。
数年前立ち寄った100円ショップでCDがずらっと並んでいる。その中に40年代50年代のオールディーズが20枚、シリーズとしてあった。とりあえず全部購入、といっても2,000円である。
ただ昔のLPレコードが元になっているのだろう、一枚あたりのトータルタイムはせいぜい30分少々である。MDに詰め込もうと思いその帰り、家電ショップで10枚買うと2,000円以上した。あの名曲がずらっと入ったCDが20枚二千円。空のMD十枚で二千円以上。この矛盾に、車の中でひとり笑ってしまった。
これも以前のことになるが、常連のO氏が「100円ショップでいいの見つけた」と言って店にやってきた。イヤホンで聞くタイプのAM専用トランジスター・ラジオだ。
聞いてみるとこれが100円か、と思うぐらいいい音をしている。「いいなあ」と僕がいうと「つぎ買ってきてやる」というと数日後に買ってきてくれた。もちろん頂いた。
僕は素直に喜び、しかしそのままでは聞けない。イヤホンと電池が要る。次の日近くの家電ショップで必要なイヤホンと単四電池二本買った。都合500円だった・・・。
100円のトランジスター・ラジオを聴くのに500円。またまたこの矛盾にひとり笑ってしまった。しかし数字の矛盾はともかく合わせても600円、ラジオの好きな僕は今も重宝している。
それからまた数日経った。
久しぶりに顔を見せた常連のS氏に、都合600円も含めその話をすると、大笑いしながらポケットから何かを出した。見ると形はちょっと違うがやっぱりイヤホンタイプのトランジスター・ラジオである。よく見ると先のAM専用ではなく、FM専用のようである。聞くとやっぱり100円ショップで、しかし100円ではなくイヤホン付で300円だったとの事。両耳タイプのイヤホンであるが、さすがにステレオではないがFMならではのクリアないい音である。僕は欲しそうな顔をしていたのだろうか、数日たち買ってきてくれた。これまた頂いた。次の日単四電池二本、200円だった。
ところで100円、300円。その“物”から考えると恐ろしく安い。一応ラジオは精密機械だ。そのうちツマミ類がすぐグラグラしだすとか、すぐ感度その他雑音がしてくる、最悪音が出なくなるとか、と思ったりするが、またそうであったとしても文句を言えない値段ではある。が、一向にその気配もなく、それから数年何ら不都合なく動いてくれている。
ついでに書くとFMラジオのほうはチューニングはダイヤルではなく、オートスキャンという優れものである。それもしっかり正確ときているから、不思議としかいいようがない。原価いくらなのだろう?・・・製造元(中国であろうが)の出荷時いくらなのだろう?といらぬ心配をしてしまう。
店でちょっとしたアクセントにロウソクを燈している。この流れからしてもちろん100円ショップで買っている。
これは以前山で使っていたランタン用のろうそくと同じものである。はずである。小さいもので燃焼時間4〜5時間くらいのロウソクであるが、山岳ショップで6個400円であった。今アロマ系も含め色々なロウソクが売られている。当然100円ショップにもあり、そこに同じロウソクを見つけた。
一箱10個入り、当然100円である。あまりの値段の違いに、見た目は一緒だがさては、変な煙、スス、途中で消えたりしないかと思いきや、何の不都合もないどころか、むしろ燃焼時間など長いくらいである。よってそれより毎日店で燈すようになった。ひょっとしたら目に見えない毒でも発しているのだろうか。
ともかく6個で400円と10個で100円。どっちが安いか計算するまでもない、不思議である。
先日愛用している自転車の後輪の車軸が緩んでいた。
工具箱を見てみると13ミリのスパナがあった。車軸に当てると少し小さく合わない。数キロ先のホーム・センターで一ミリ大きいサイズの14ミリを買ってきた。500円だった。が合わない。しょうがない、もうワンサイズ大きいのを買って来ざるをえない。車に乗ったところでその途中にある、100円ショップに各種工具類があるのを思い出し、覗いてみた。
あるある、立派に揃っている。今度は15ミリを買った。作りもしっかりしている、もちろん100円だ。家に着くと早速車軸に当ててみる。今度はピタリと合った。
まずはよしよしである。が、ホーム・センターの500円とこちらの100円と並べてみる。若干材質は違うような気がするが、むしろ100円ショップの方が肉厚(鉄厚)があるような気もするし、う〜ん・・・やっぱり不思議である。
この事を先日我がHPの掲示板に書いたところ、W氏やY氏やS氏などがなかなか鋭いことを書いてくれていた。
「金型償却費関連、輸送費、一括生産、オーバーヘッド」また「表面加工に特許の影」「もともとの開発費」等々、なるほど素直に納得できそうである。
落ち着いて考えれば何かが違うのであろう。こういう工具類などは強度など特に違うのかもしれない。
たとえば普通特にその方面でもない、一般人の僕などがどのぐらい使うかというと、自転車の車軸などそうそう緩くなるものでもない。また自家用車をスパナやレンチなど持ち、毎週いじっている人など、あまり見かけるものではない。大概の人は一生の間にスパナを何回使うか、といった程度ではなかろうかと思う。とすると僕など100円ショップで十分といえないこともない。
自転車屋さんやバイク、また車の整備士の方々のように一日中スパナが必要な人たちが、仮に100円ショップのスパナを使ったとすると、いくらももたないのかもしれない。やっぱり開発費、その他のかかった500円の物でなければ・・・。
しかし、それにしても、でも、やっぱり何か気になる。
100円のスパナをプロの人たちが使い、いつしかバキッ、ゴンと折れ「こんなまがい物、つかえるか!!」と怒り、投げ出すところを自分の目で確認してみたい。なぁ〜・・・