昔話になる。
看板を消し、グラスを洗い、その日使ったコースターをカウンターに並べる。
そして少ない伝票をバッグにしまいタイをはずす。
店のシャッターを下ろす頃には3時を回っている。
そんな夜中でも17〜8才にも満たないような少女がまだ盛り場をうろついていたりする。
今からの話は古くは独身時代、もう時効という事で勘弁していただきたい。
ある静かな夏の日の事、いつものように看板を消し私服に着替え、店の階段を降りシャッターを下ろす。
通りには誰一人歩いていない、と思った。
僕が行く方向の角に人の気配を感じた。
こっちの方向へ女の二人連れが何か慎重に歩いてくる。
ある程度の距離(たぶん2〜30メートル)になり何となく目が合いそうになった途端、クルリと背を向け、逃げるようにして角を右に曲がっていった。
「なんだ今のは・・・?」と思いつつ僕はあえて左側へ歩いてゆく。
そしてちょっと立ち止まり、振り向くとその二人は僕の方を見ている。
明らかに何か意識している。
他には誰もいない、僕はまた歩き出した。
するとその二人も僕の方向へ歩いてくる。
もはや声を掛けない訳にはいかない。
僕は立ち止まり「君達こんな時間に・・・?」とにかく立ち話もなんだからと、近くの居酒屋へ誘った。
素直についてくる。
明るいところで見ると、以上に若い。
若いというより幼いと言ったほうがいい。
よく話を聴いてみると、まだ高校生であるという事。
そして親に友達のところへ行くといって出てきたものの、留守だったらしい。
時間も時間だしどうしようかと思っているところへ僕が現れた、という事らしい。
そして何故か安心感を持ったという事らしい。
そして二人で顔を見合わせながらケロッとした顔で言う「それにこんな時間にもう帰れないもんねえー」
その頃は一間しかないアパート暮らしである。
布団も一組しかないがそれでも構わないという。
布団を敷くと上着だけ脱ぎ、明るく「オヤスミナサーイ」と二人で寝てしまう。
僕はあっけにとられながらその横で寝た。
夏のことだから毛布だけでもまあ良い。
するとすぐ横の子が、右手を上にあげバタンとよこに倒す。
すると僕の胸へ落ちてくる。
とりあえずその手をとり、布団の中へ押し入れてやる・・・。
また暫くして、今度は右足が僕の下腹部へドタンと来る。
もちろん生足だ。(予断だがついでにパンツも見えている)
何故か“もったいない“と思いつつ、また布団の中へ入れてやる。
しかし此処までならとにかく、次が問題である。
今度は体ごとボテーと来てしまった。
ほとんど僕に抱きつくようなカッコウである。
もうこうなると単に寝相の問題とは思われない。
よくよく考えると寝付いた様子もないのではないか?
(分からないが)僕は重たいのを我慢・・・イヤイヤ、いい気持ちを我慢しながら、自分との葛藤が始まる。
まずどう考えても若すぎる。
なんと言っても高校生である。
社会問題。
いやそれよりも自分のモラルの問題・・・。
しかし、男たるもの「据え膳食わぬは男のうんぬん・・・」というではないか。
とすると今食わねば男じゃなくなる。
イヤイヤこの場合余りにも幼すぎる(それにもうひとり隣にいるし・・・)と、あれこれ考えるうちに僕の枕元でゴーゴーと大きなイビキが聞こえてきた。
「ナッ、ナニー・・・。」