人さまにとっては、どう〜でもいい事だろうが、今回はわが妻君についてチョッと触れてみよう。
『どう〜でもいい事なら、書くな』と言われそうだが・・・まあ、そういわんと。
出身はお隣の富山である。
知り合った時、僕は金沢でもう店を営っていたが彼女は富山の、ある公立病院で放射線技師として勤めていた。
大学が金沢だったせいか、たまに学生時代を思い出しつつ、
富山から金沢へ出て来ては「片町」で飲み歩いているうち僕の店へたどり着いた、という訳である。
いつしか当時住んでいた僕のアパートまでたどり着き、やがて幸か不幸かとうとう僕の妻の座までたどり着いた、という訳である。
年齢(トシ)は僕より10個ほど下だが、意識はもうとうに主としての僕の立場をも通り越している。
ある日、身長も僕より10cmも低いのだが、体重も通り越しているのではないか?と、
かるく聞いてみたことがあったが、これには厳しく、激しく否定された・・・その後この件に関して触れたことは無い。
さて嫁さんの“うんぬん”はこれくらいにして本題に入ろう。
先日二人で食事を我が家でしていると、テレビからきれいな音楽が流れてきた。
画面に目をやると、南米はペルーからやって来たという二十歳前後の六〜七人のバンドが演奏している。
「コンドルは飛んでいる」で使われているケーナの音色がなんとも耳に心地よい。
嫁さんはどうかというと、画面を見ながら、
「う〜ん、アンデスの山々に響き渡るにはカルイ。
音に伸びが無い、しなやかさも無い、やはり彼らはまだ若い、人前で演るには十年早い」
とまあ、解ったようで解らない事を言っている。
もはややさしさや、思いやりというものが全く感じられない。
実に嘆かわしい限りである・・・う〜ん、よわった。
しかし、その嫁さんも酒に関しては滅法、やさしくなる。
ある日曜日、久しぶりに差し向かいで飲っている時の事である。
ゆっくりバーボンのグラスを口に運びながら、静々と言う。
「ひとつひとつの酒に対して、素直な気持ちで飲むと、どんな酒でも不思議とおいしくなるわねえ・・・」
とまあ、なかなかの名言だ。
もともと<合わない酒はあっても、不味い酒は無い>を持論としている僕にとって、これほど嬉しい言葉はない。
我ながら理解のある頼もしい女房を貰ったもんだと思っている。
いずれにしろ、人にも酒にも優しくありたいものである。
なかなか海外旅行もさせてやれないが、幸いにして色々な国の酒が日本に居ながらにして飲める。
スコッチ・ウィスキーはイギリスはスコットランド。バーボンのアメリカ。テキーラのメキシコ。ラム酒のキューバ、グワテマラ他。ウヲッカはロシア北欧。珍しいところではネパールのラム酒、ウィスキーも店に置いてあるが、とにかく上げたらキリが無いのでこの辺で止める。
勝手に想像に馳せながら、行ったこともない国の酒を飲む、というのもいいものである。
飲兵衛であるがゆえのことではあるが。
酒で旅ができる。いい人と会ったもんである。