今回は電話の話しである。ケータイの話しではない。
昔はよく「女の長電話」などと言っていたが、ケータイの時代になると女性だけに限らないような気がする。
ケータイ(携帯)=電話、というのは携帯電話を持っていない当方としては納得しづらい所もあるが、
ある種ココまで定着すると「まあ・・・よい」とむりやり言うしかない。
さておき、今回は二十年くらい前、もちろんケータイなど無い時代、かつ当時としてはめずらしい男の電話魔の話である。
電話魔と、そうでない人の違いは用事があって電話するか、用事がなくても電話するかの違いであろう。
当然電話魔は用事がなくても電話するわけで、結局酒が入っている時が多くなる。当然受ける方はたまらない。
なぜなら夜の事でもあるし、ましてや大した用事でもないので、よほど心やさしい人か、
ヒマをもてあましてる人でもないかぎり、まともに相手などしてくれない。
だから当然相手は早く切ろうとする。しかしこっちは電話魔だ、簡単に切るわけにいかない。
といっても結局は切られそうになる、すると
「もう切るんか、お前冷たいやっちゃなあ・・・」となる。
何だかんだで、結局切られるわけだが、今ひとつ満足のいく会話じゃないので次の相手を探すことになる。
コレの繰り返しだ、電話魔はいそがしい。
さて本文に入ろう、昔のあるお客の話である。
夕方店の電話が鳴る、受話器をとる。「わしじゃ、今日飲みにいくぞ」となるわけだが、実際はこんなに短いはずがない。
しばらくして、また電話が鳴る。受話器を取ると「わしじゃ、今ココに着いた(よその店)、すぐ行くぞ」
それから二時間ほどして、また電話が鳴る。「わしじゃ・・・・・」ということでやっと我が店に来てくれるわけだが、
必ず電話に一番近い席に掛ける。
まずは今までいた店に電話する。「わしじゃ・・・・・」そして次に行く店に電話する。「わしじゃ・・・・・」
受話器を下ろすと喉が渇いたのか、「みずッ」といってグイとあけ、「バーボンダブル、お前も飲め」となるのであるが、
まだ当然次の店がある。それでも一時間あまりの間に、ダブルで5〜6杯は飲む。
そしてまたおもむろに受話器を取り次の店のダイヤルを回し
「わしじゃ・・・今から行くぞ」と、なるのである。
そしてお勘定となり、次の店にイソイソと行くのである。しばらくして当然電話のベルが鳴る。
「わしじゃ・・・・・」
やがてその人のことも忘れ、閉店時間となり、あと片付けをしていると電話のベルが鳴る。
「わしじゃ・・・今から帰るぞ」
次の日、いつものように店を開ける。電話のベルがなる。
「わしじゃ、今日は行かんぞ」