今我が家はリフォーム中です。
今日もその道の名人、達人の方が仕事をしておられます。
我が家の事とはいえ、素人の僕はする事がないので下の部屋で
本でも読もうと開きかけると、上の階でトントントンと釘を打つ音
がしてきます。ちょっとしたBGMです。
その内にゴトン。大工暦35年の伝さん、どうやら金槌を床に落と
したようです。しばらくして 「イテーッ」
どうしたのかと思ったらクギを踏み抜いたとの事、治療してくると
言って出て行きました。
それから又しばらくすると、外の方で 「オーッ、ガタン、ウワーッ」
と、音やら声がしたと思うと、これまたこの道40年という一級塗装
師の玄さん。足場を踏み外し、頭からペンキをザブリ。笑いとも泣
いているともつかない顔で 「今日は仕事にならん」
と言いながら、帰って行きました。
やはり一級塗装師のプライドが許さないという事でしょうか。
玄さんが帰った後、すぐ横でタイルを張っていたこの道一筋45年
という左官屋の勘治さん。こぼれていたペンキに足を滑らし
ツルーッ、ドテーッ、グキッ。
思いっきり腰を打ち付けました。「アイターッ」
と言いながら、シップしてくるという事で帰って行きました。
やはり、泣いているとも笑っているともつかない顔でした。
僕は部屋に戻ると、隣の間でカラオケ大好きというクロス張りの
仙さん。調子よく鼻歌まじりで、キャタツに乗り仕事をしています。
その鼻歌が 「ア~~ッ」に変わりました。
バランスを崩したのでしょうか。そのまま、バリバリーッ、ズボーッ、
フンガーッ。すぐ横のふすまをブチ破るといいますか、ブチ抜いて
しまいました。
仙さんにケガはありませんでしたが、表具屋に持っていくと言って
出て行きました。
やれやれ、と思っているところへ二階の方で 「フンギャワーッ」
の声と同時に、チカチカチカーープツン。
と電気が切れてしまいました。電気屋の番さん、どうやらプラスと
マイナスをそれぞれの手で持ったようです。ペンキ屋の玄さん、
左官屋の勘治さんほどではないにしろ、この道20年の番さんに
しては、実に初歩的なミスと言えるでしょう。
電気はすぐに付きましたが、なんだか寒気がすると言って帰って
いきました。
その一部始終を見ていた現場監督の藤堂さん。
とうとう職人が一人も居なくなり、こころなしか肩を落としながら
帰っていきました。
その又一部始終を見ていたウチの嫁さん。
なぜか笑い出したのです。それもいつものように、ホホホッなら
よかったのですが、まるで女を忘れたかのような笑い、
ウワッハッハッハングワーッ、おもわずアゴが外れそうになるのを
僕はあわてて、押さえてやりました。
さて静かになったところで、何事もなかったように本を読み出す
僕でありました。
お・し・ま・い