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(C)2003
Somekawa & vafirs

『水色の天使「夫婦編」』

鳥越介順

あるところに結婚20年経つ、とても仲のよい夫婦がいました。
あるとき突然に妻がなくなり、残された彼は悲しみにくれ、二人の間にいた子どもたちも、その父を哀れむほどでした。
妻を亡くしてから一年経ったころにも「妻にもう一度会いたい」と毎日願っていたところ・・・その願いが通じたのか、ある日、水色の天使が彼の前に突然現れて言いました。
「亡くなった妻と一緒に過ごした日に戻してあげましょう。」
彼の顔に久しぶりに笑顔がこぼれました。
そして水色の天使が続けて言いました。
「しかしルールがあります。あなたはその日が終わるまで、彼女に今この約束したこと未来に起こることを伝えてはいけない。 そしてその日はゆっくりと二人で過ごせるように私が見守ることを保証しましょう。」
彼は大きくうなずいた。

あっ!眩しい・・次の瞬間

すがすがしい朝、どうやら朝食の時間のようだ。
状況として・・私は平日なのに休みをとっているようだ。
妻もここに居る。子どもたちはおばあちゃん家にあっそうか、夏休みだ。
「あら、クーラーつけたの?あなたは相変わらずに暑がりねぇー」
久しぶりの妻の声に涙が出てきた・・・気づかれないようにそっと拭いた。
彼「ねえ、今日はどうしよう、ずーっと一緒に居れる?」
妻「そうねえ」
彼「美味しいランチでも行こうか?」
妻「やったあー」と嬉しいそう。

とても心地よい朝食の時間を過ごした。
いつも窓から見える景色と変わりはないが、今日はとても鮮やかに見えた。
妻が朝食の後片付けをはじめ、私は新聞を読み始める。この間合いも懐かしい。懐かしさを味わいながら私の目は新聞どころではなかった。
妻の台所に立つ後姿へと。
食後に妻が庭に出て花壇の手入れをはじめた。
家庭菜園の収穫である。
妻が、「今日は天気がよく気持ちいいー」と伸びをした。
私も真似をして伸びをした。
なんて気持ちのいい気候なんだ、夏なのに暑すぎず、とても気持ちいい。
しかも今日は珍しく誰からの電話も無く、邪魔も入らない・・・
その時に天使の話を思い出した。
「守られているんだ、そうだ今日は絶対に守られているんだ、素敵な日になるように・・・・」
楽しい花壇でのひと時を過ごし、ダイニングでコーヒータイム。
いつもよりゆっくりとコーヒーをたてた。
そしてゆっくりと飲み始めた。私は普段と変わらない振る舞いをした。
ただ違うのは妻の話を、ひと言ひと言を聞き漏らすまいと耳を傾けた。
そしてすべての動き、手を止めて彼女の話を聞いた。
私にできることはただそれだけだった。
そう、それしかできないことにも気づいた。

そうなんです。
私たちが生きている今日はいつかの未来に水色の天使にお願いして、お願いしていただいた今日かもしれません。

そして守られている一日を過ごし、そしてできることは目の前に居る人の話を思いっきり聞いてあげること・・・・

『水色の天使 「今日」』

あるところに一人娘(7歳)を亡くした夫婦がいました。
子どもを亡くしてから一年経ったころにも「娘にもう一度会いたい」と嘆いていました。
ある日、一人の水色の天使がその夫婦の前に突然現れて、言いました。
「今、あなたの持っているすべての財産と引き換えであれば、亡くなったお嬢さんと一緒に過ごせる日を一日だけプレゼントできますが、どうしますか?」
その夫婦は迷うことなくOKしました。
そして水色の天使が続けて言いました。
「しかしルールがあります。あなた方はその日が終わるまで、今この約束したことやお嬢さんと死別することの記憶は消してしまいます。まるで過去に戻った一日を自然に過ごす感覚ですよ、それでもいいのですか?」
その夫婦はお互いに顔を見合わせてゆっくりとした口調で「分かりました。」と返事しました。

そしてパッと光が・・・まぶしい・・・

次の瞬間、いつも通りの朝になっていました。
そうです、娘が生きていた時の何気ない一日でした。
朝から「早く起きなさーい!!」妻の叫ぶ声、眠たい目をこすりながら新聞を読む夫。
貴重な貴重な一日が始まりました。

そうなんです。
私たちが生きている今日はいつか未来に水色の天使に、全財産と引き換えにいただいた今日かもしれません。

<ロブロイストの日々>  毎・月始め更新いたします。