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Somekawa & vafirs

『マジックの練習』

山崎真孝

こんにちは、マジシャンのCULL(カル)です。
マジックを披露すると、よく「どうやって練習してるんですか?」といった質問を受けます。
まず、書籍やDVDによる沢山の情報を仕入れ、その中から、自分のスタイルに合ったものを選びます。そして、はじめて練習が始まります。 しかし、結局役に立たず、最終的に放棄するものの方が多いのが現実です。

さて、『練習』。実際、マジックという芸は、大変な練習量を必要とします。そして、練習しただけではお見せすることは出来ず、 それに台詞を入れ、実際に人に観てもらい、反応を確認しつつ練り上げていくわけです。
特に、私のようなクロースアップ・マジシャンは、お客さんの手の上で現象を起こすので、予期せぬアクシデントも付きまといますし、 コミュニケーションを密に取る必要が出てきます。と言う訳で、練習には『人に観てもらう』ということが必要不可欠なのです。

しかし・・・練習段階では、当然上手くないし、台詞も決まってないので、面白くない。
その上、何度も同じマジックを連続で見せられる可能性は高い。
更に、折角観てあげても、下手だし面白くないので、良いリアクションも取れないのが当然なのにも関わらず、 マジシャンはそのリアクションに対して『逆切れ』してくる場合も多々ある。(汗)
というわけで、身近にマジシャンがいる人は『たまったものじゃない』のです。(涙)

この被害者は、大抵兄弟、家族、友人です。その点、マジックマニアの仲間がいると非常に状況的に恵まれていることになります。 ま、辛辣な意見を言いますが、それでも快く観てくれます。なんと言っても『御互い様』ですから(笑)

ちなみに、数年前に亡くなったマジック界の巨匠Dai Vernon師にこんな逸話があります。
ある日、はしゃいでなかなか寝ない孫達にVernonの奥さんがこう言いました。

「貴方達、早く寝ないと、おじいちゃんが手品見せるって言い出すわよ!」

Vernonと言えば、世界で唯一“Professor”と呼ばれていた、誰もが尊敬してやまない存在です。そんな彼でも、家族に散々、 中途半端な状態を試してしまったため、このような扱いになっていたようで、これはもう、上手下手の問題ではなく、 世界中のマジシャンがもたらす、共通弊害なわけです。

例えば、僕が最愛なる奥さまにマジックを観ていただこうと思うと、このようになります・・・・・

夕飯が終わり、ひとごこちついたころ。 

ここ数週間練習し、納得いく状態になったマジックが1つあるので、妻に一度観てもらいたいと思い、準備して待っている健気な俺。

「なぁ、マジック1つ観てもらえる?」  「今から、お皿洗うから・・」 「はい、すみません。」

「そろそろ、いい?」  「えっ?なんのこと?」 「いや、だからマジック観てほしいんだけど」 「今からお風呂に入るし、その後でもいいよね。」 「勿論!」  (←この間、ずっと手に物を隠したまんまでしたが、それは我慢します。)

「今、いい?」 「なに?」 「マジック観て欲しいんだけど」 「まだ、言ってるの?」 「まだって・・・」 「早くして。」 「あっ! はいっ!」  

・・・・まるで 『虐げられた飼い犬が、やっと散歩に連れて行ってもらえて喜んでいる』 ような感じです。(号泣)

でも、この直後・・・

「あっ、10時。 ドラマが始まる!」 「・・・」

こうなることも、ままあり・・・・・・・・・・・

ま、マジシャンの実情なんてこんなもんです。
夢を売ってるのに、裏は『夢がないことこの上なし』!!(哀)

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