インチキ・ブルースマン 菅井 和
4年程前まではロブロイにちょこちょこ顔を出してました。今では帰国したときにしか顔を出せません。
現在ラスベガスに住んでます。
ラスベガスに来た頃、ロブロイのようなバーがないものかと探してみました。
とりあえずキーワードはブルースだと考えてブルースをBGMにしているような静かなバーを探しました。
はっきり言ってそんな渋い店は見つかりませんでした。
どうやって探せばいいかも分かりません。
それなら、せめてブルースの生演奏の店をと探しました。
ブルースを求めて、検索スタート!
見つけました。インターネットは素晴らしい。
仕事の帰りにひとりでふらっと行ってきました。店に着くと、あんまり治安のよろしくないエリア。
ちょっと怪しげな場所です。でも大丈夫でしょう。
そういえば途中にトップレスのバーもあるし、暗くなってきたし、やばそうなエリアやんけ。でも大丈夫でしょう。
(多分・・・)せっかくここまで来たのだから、大丈夫でしょう。
(ちょっと不安)
意を決して中に入ると大音響で白人のバンドがブルースをやってました。
ロックバンドがブルースの曲をやっているというだけで、私の求めていたブルースではありません。
勤労意欲の失せるようなコテコテ、ドロドロのブルースを期待していたのでちょっとがっかり。
それでも、有名な曲(クラプトンとか)もやるのでそれなりに楽しめました。
ビールを飲みながらいい気分で演奏を楽しめました。何か知らんけど結構楽しいやんけ。
注文したおかわりのビールをカウンターに腰かけて待っていると、横からごついおっさんに話し掛けられました。
ヘルズ・エンジェルズ・タイプといえばご理解いただけるでしょうか?
いかにもハーレーに乗ってます、という感じのメチャメチャ柄の悪そうなごついおっさんが話しかけてきました。
以下、会話。
おっさん「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
インチキ「へ?」
うるさい場所なので何を言ってるか聞き取れません。
おっさん「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
インチキ「What did you say? (何ですか?)」
再度
おっさん「What are you doing in my seat? (お前はわしの席で何してんねん?)」
インチキ「It was not occupied. When did it become your seat? (この席空いてたやんけ。いつからおっさんの席になったんじゃい?)」
ちょっとムカッときたので言い返したところ、
おっさん「Now it is. (今からわしの席じゃ、ボケ)」
(雰囲気を伝えるために関西弁訳)
気が付いたら同じようないかついおっさんがもう一人私の隣に立って参加しようとしてます。
「わし、インネンつけられとるやんけ!」(ようやく状況に気が付いた。)
酔いがサーっと引くのが分かりました。私の頭は高速で回転します。
二人組にボコボコにされる → オカマ掘られる → 再度ボコボコにされる→ 頭を撃たれて砂漠に埋められる。
「そんなん嫌や!」(心の底から)
最悪のシナリオが頭の中で回り始めます。周りの人たちは知らん振り。私はビビリまくり。
「ヤバイやんけ!」
気が付けば店の中で白人でないのは私一人。浮いてます。
気が付けば柄の悪そうなのがいっぱいいます。かなり浮いてます。
しかも仕事帰りでスーツにネクタイ姿。浮きまくってます。
狼の群れに放り込まれた子羊状態です。(別に放り込まれたのではなくて、自分で勝手に行ったのですが、、、)
ダッシュで逃げてきました。(それしか方法はないですよね?)
車に乗って入り口の様子を伺いましたが、追いかけてくる様子はありません。ほっと一息、脱出成功。
完全なヘタレです。
自己嫌悪でブルーになりました。(私が求めていたブルースこんなんやない!)
でもオカマ掘られて砂漠に埋められるよりましだと無理やり自分を納得させてます。
「本日の教訓:アメリカの怪しいバーに背広姿で行かないこと」
遠くにありて思い知るロブロイのありがたさ。
今度は慎重に店を選びます。実話です。