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(C)2003
Somekawa & vafirs

Blues and Bourbon

端野 威輝

 ブルースとバーボン…これがロブロイにある限り、私はロブロイ ストであり続けるだろう。

私がブルースに出会ったのは、20歳頃だったと思う。 ずっとハードロックが好きだった私が、レッド・ツェッペリンの アルバムにクレジットされている "Dixon" がウイリー・ディクソンと いう人で、ブルース・ミュージシャンであることを知り、「ちょっと、 試しに聴いてみよう」 と思った事がきっかけだった。

私が探しに行った店にはウイリー・ディクソンのCDはなかったが、 ブルースのCDはまとめて置いてあり、そこで何となく気になったのが マディ・ウォータースだった。そこにあった中から、"ハード・アゲイン" というCDを購入した。 ハードロック好きの私でも入り込んで行ける、シカゴブルースの世界 がそのCDにはあった。

ずば抜けた歌唱力はないが、何とも説得力のあるボーカル。 適度に歪んでいながら、クリアなギター。 最初は何の楽器かわからなかった、アンプリファイドしたブルース・ ハープ。 今聞いてもつい高揚してしまう、すばらしいアルバムだった。 これ以来、底無し沼のようなブルースワールドから抜け出せそうな 気配はない。

数あるブルースの中から、何か一曲と言われれば、私はマディ・ウォー タースの"ロング・ディスタンス・コール"を選ぶ。 ベースがシンプルなリズムを刻む中、マディ・ウォータースの引きずる ようなスライドギターとリトル・ウォルターの表情豊かなハープが絡み、 やがてマディが歌い出す。単調でありながらも、実に深い、味わいの あるブルースだ。

私が初めて向き合ったバーボンは、アーリー・タイムスだったと思う。 バーボンの味なんかよりも、当時のCMがライ・クーダーのスライド・ ギターの演奏シーンを映し出しており、年末に来年のカレンダー、  (もちろんライ・クーダーの写真入り)目当てにボトルを買った事を 憶えている。

まだブルースにのめり込んでいたわけではないが、あのCMの雰囲気 には大人になりかけた私の心をくすぐる、何かがあった。

そんな頃は、バーボンといえばアーリー・タイムスとフォア・ローゼス くらいしか知らなかった。フォア・ローゼスは今でも好きなバーボンの ひとつだが、アーリー・タイムスはこの10年くらい飲んだ記憶がない。

それに代わって、オールド・グランダットやオールド・クローがロブロイ でキープされていることが多い。スコッチやジャパニーズもいいのだが、 私としては、バーボンに勝るものなし。 結局、ブルースと同様に、バーボンの底無し沼から抜け出せる見込み はなさそうである。

数あるバーボンの中から、何か一杯と言われれば、私はバージン・ バーボンを選ぶ。100プルーフ(50度)を超える、ハードな一杯である。 口に含んだ時点で来る甘さ…やがて襲ってくるアルコールの刺激…。 再びやってくる甘さと、鼻に抜けていくあの香り…。ぜひストレートで 味わいたいバーボンである。

ブルースとバーボン…このふたつが揃ったとき、私にとって最高の 味わいが生まれる。 耳と皮膚でブルースを感じ、舌と鼻でバーボンを味わう。 そして、私の眼前にはロブロイのカウンター越しに広がる、あの風景…。

マスターとの会話を楽しみながら、私は自らの五感を使って、ブルースと バーボンを味わっている。

とは言っても、実際に私がロブロイにたどり着く頃には、自らの五感が かなり麻痺した状態であることを、私は自覚している。(マスターがうな ずいている)

ブルースとバーボン…これがロブロイにある限り、私はロブロイスト であり続ける。

<ロブロイストの日々>  毎・月始め更新いたします。