ロバート・ジョンソンという幻のブルースマンがいた。
幻といってもブルースをちょっとでも好きな人ならば知らない人はいない。
1930年代、若干27歳で死に、レコード(CD化されている)も二枚29曲しか残していない。
録音状態・年代もあるだろうが、彼のかすれたギターと、物悲しさの中にも激しさを感じさせるヴォーカルが何とも耳に心地よい。
今でもよく聞いている。
その彼の代表曲の一つ「クロスロード」という映画がちょうど20年前1987年に作られた。
もちろん当時僕も観に行った。
先日レンタルビデオショップを覗いていると、そのクロスロードがビデオ・テープであった。
(まだDVD化されていないようだ)懐かしさで借りてきた。
バークリー音楽院、クラッシック・ギター専攻のエリート白人学生(ラルフ・マッチオ)が先生の止めるのも聞かず、何故かブルースに憧れ、ロバート・ジョンソンの曲は29曲ではなく、30曲あった。
という設定で後一曲を探しに(求めて)テネシー州はメンフィスへ向かう、という事から始まる。
途中、ひょんな事からメンフィス出身の老ブルースハーピストと知り合い、道中を共にしだす。
しばらくして訳ありげな女の子とも知り合い、それから三人の珍道中である。
汽車を乗り継ぎ、またヒッチハイク等をしながらだんだんと近づいてゆく。
老ブルースマンのハープ(ハーモニカ)が実にいい。
(ソニー・テリーが吹いている)そしてバックに流れるライクーダーのスライドギターがこれまたいい。
映画の中の効果音として聞くせいか、ソニー・テリー、またライクーダーそれぞれ自身のアルバムを聞くより耳に心地よく響く。
不思議なものだ。
途中老ブルースマンにブルース・ギターの特訓を受けながら進んでゆく。
やがて着くと、そこはギラギラしたライブハウスで壮絶なギター・デスマッチを演っている。
当然若者も出され、そしてスティーブ・バイとのギター・バトルが始まる。
本場のギター王者である、スティーブ・バイに負けそうになるが、最後は本来の彼のギター、クラッシック奏法で勝つ、というちょっと残念なような気もするが、まあそこは映画、どこかで落ちをつけねば、という事だろう。
結局30曲目はなかったのであるが、老ブルースマンに「30曲目はお前が創るんだ」と、最後に言われる。
映画としては淡々としていて、大作でもなんでもないが、(大作だけがいい映画ではない)とにかくブルースの好きな人にはBGMも含め、十分楽しめる映画である。
たまたま僕もちょっとギターとブルース・ハープ(ハーモニカ)を演る。
ブルースを聴きながらのバーボンは美味い。
ブルースを演りながらのバーボンは、もっと美味い。