そろそろ日本酒のおいしい季節になってきた。
しかし、長年蒸留酒に慣らされてきた僕の体は、残念ながら醸造酒(日本酒、ワイン)はちょっと弱い。
当然製法上、蒸留酒(ウィスキー)などより日本酒のほうがアルコール分は低くなる。
にもかかわらず低いほうに弱い、というのも何やら不思議な気もする。
それはともかく、小料理屋さんなどで、小皿を前にして徳利と盃。もちろん手酌でいきたい。
トクトクッと注ぎ、ゆっくり口に運ぶ姿など、う〜ん、日本人はやっぱりこれだ、と素直に思ってしまう。
そこでたまに真似事をやったりするが、僕の場合日本酒ではなく焼酎を徳利で燗をして呑むわけである。
もともと九州(に限らないかも知れないが)ではそのまま燗をして呑まれていた。お湯割り文化は、たぶんそう古くないはずである。
さて本題へ入る。先日米国人の旅行者が四人でやってきた。もともとこの店は大通りから一本は入ったかつ2階にある店である。
そんなところを覗く外人は大抵日本語もそこそこ話せるので助かる。今回もそれにもれずである。
「コンバンワー」
に始まり、
「バーボン&ウォーター・ワン、コーラ・ツー、ワタシ、サケ・ロックネ〜」
「OK」
と言いたいのだが当店は日本酒は置いていない。やむなくその事を告げると、その外人は見事なイヤミを言ってくれる。
「サケ、ナ〜イ。ココドコデスカー、ニッポン・カナザワデショウー」
いやーまいった。ましてここは北陸、日本有数の日本酒どころである。だが幸いにして焼酎なら置いてある。
日本が誇れる蒸留酒である。
「焼酎はいかがでしょう?」
と、申し訳なく聞いてみた。
「ショーチュー、ワタシキライネー」
と、にべも無い。
すこし腹が立ってきた。ここは看板も“バーボン&スコッチBAR”と書いてある。
そして店内の雰囲気も、並んでいるボトルも一見して日本酒とは縁がなさそうに思えるはずだが・・・。
少なくとも注文を受けたことは一度も無い。
そもそも喜ぶべき事ではないだろうか。日本酒が無いことより、自国の酒があることのほうを。
旅行先で日本贔屓(びいき)のバーがあったら、素直に楽しく日本酒を楽しめばいい。
ちょっと他を探せば、その国の酒はいくらでもあるだろう。
結局、何とか解ってもらえた結果。そのイヤミな外人はキライと言っていた焼酎を今度は
「コノサケモ・オイシイネー」
といいながら呑んでいる。焼酎と清酒の違いなど分かろうはずもなく、また説明する気もしない。ともかく今ひとつすっきりしない。
おまけに、そういう人ばかりではないが、この店も含め日本のバーのルールを守ろうとしない。
一応軽いツマミを出すがそれもいらないと言う。挙句の果て、他のお客に向かって
「ミナサーン、エイゴノレッスンヲシマショー」
と来た。しょうがないので僕は
「ここはニッポンのカナザワ、金沢弁の勉強をしましょう」
どうも素直な気になれない。何やら妙な空気が漂いながらも、周りの心優しいニッポンの人たちには
この“やりとり”を楽しんでいたようだが、はて良かったのか、悪かったのか・・・?
そして最後に極めつけ、
「コノミセ、カラオケアリマセンカー・・・」
・・・・・・アルカ!