久しぶりに酒の話を書いてみよう。
酒を飲むのに理屈などいらない。グラスに酒を注ぎ、口の中に放り込む、そしてゴクンと飲み込めばよい。
後はただひたすら、杯を重ねるだけでよい。その内に酔いが回ってくるだろう、実に簡単だ。
今から二十年くらい前の話しになる。
当時<ロンリコ151>という中南米はプエルトリコ産の強烈なラム酒が日本に登場した。
151というのはUSプルーフ(アルコール度数)の事であるが、単純に2で割ればいいので75.5度、ということになる。
当時その強烈さにビックリしたものだが、今となっては同じラム酒になるがレモンハート、バカルディー共に75.5度の物もある。極めつけはウォッカになるがスピリタスという96度なる化け物まである。が、ともかくこれはこれとして二十年前の話をしよう。
ある日男性の二人連れがやって来た。
先輩らしき男が「マスターこいつ今日は酔いたいらしいから、何か強烈なやつ飲ましてやってくれ」と言う。
それじゃあ、と言う事でまずはバーボンのエズラ・ブルックス101(50.5度)のオンザ・ロックであるが、
ダブルで二杯、まるで水のように飲んでしまった。なかなかの男だ。
今度はウォッカのスミノフ(50度)である。やはりオンザ・ロックで少しライムを搾って出した。
これもあっという間にオカワリである。バー・テンダーたるもの、いたずらにお客を酔わすことを趣としない。
が、強烈かつカッコよく飲み干されると、妙な対抗意識が芽生えてくるものである。
酔わすにしろ、ただやみくもに酒を勧めるというのも、プロとして納得できない。
次はピンク・ジンにしようか。グラスの中をビター(苦味酒)で濡らし、よく冷えたジンを注ぐだけのカクテル、
まるっきりストレートになるがさて結果はというと、これも又あっという間どころか、今度は文句がきた。
「ぜんぜん酔わん、もっと効くやつくれー・・・・・」
連れの先輩を窺ってみると『まだ大丈夫』という風にうなずいてる。
いよいよこれだロンリコ151の登場である。シングルでまずは一杯・・・・・。もう一杯・・・・・。
又文句がくる。じゃあもう一杯という事で、結局ストレートで五杯飲んでしまった。
顔を伺い「もう一杯いきますか?」と聞いてみた。さすがに効いてきたのか「う〜ん・・・ちょっとトイレ」といって席を立った。
しかしなかなか出て来ない。しばらくして連れの人と見に行くと、なんと男の一物を出したまま壁にもたれ、グーグー寝ている。
そのままにして席へ戻り「色んな事があるのが男だ」と無責任に納得しながら二人でひとしきりロンリコ話に花を咲かせながら
何故かバーボンを飲み、さてやれやれと言いながらタクシーに乗せ、二人を見送った。
次の日「迷惑をかけた」と言って電話がきたのだが、さすがに何を飲んだのか記憶に無いそうである。
ロンリコの前の杯数も含め、かなりの摂取量になるが、トイレの件を除けばそんなに品のない酔い方した訳でもない。
りっぱな呑ん兵衛である。それとりっぱな一物でもあった。実にうらやましい。