さてあの暑かった夏はどこへやら、しっかり冬に向かって、というかしっかり寒くなった。
あの夏のうだるような暑さの時は「はやく冬、来てくれー」と思ったりするのであるが、いざ冬が来ると「やっぱりあったかい夏の方が、ええな〜」となる。
仮に年中「春」だったとしよう。
おそらく何処かの寒いところ、また何処かの暑いところに憧れるのかもしれない。
また四季があるからこそ「春うらら」とか「秋深し」また「雪見酒」とまあ情緒ある言葉が生まれるのであろう。
残念ながらわが家にはないが、雪見障子より頭が白くなった庭木を愛でながらの熱燗徳利、まずいはずがない。
出来もしない「句」など一首ひねりたくもなるものである。
・・・わが家(いえ)の 障子あければ 隣家の壁・・・
(おそまつかつ、字余り)
本題に入ろう。
雪見障子はなくても冬は楽しめる。
それはなんといっても鍋料理だ。
わが家も例にもれず冬になると毎週のように「鍋」を楽しんでいる。
鍋のいいところはなんといっても、土鍋でも鉄鍋でもなんでもいいがそれ一つでよい。
あとは人数分の小鉢があればよい。
オヤジは何がしつまみながら酒をチビリ、チビリ飲ればいいし、子どもはしっかり具材を食べればよい。
仕上げは雑炊もよし、うどん、またラーメンの麺もよい。
特に韓国風の鍋だったら何故かインスタントの麺が合う。
とにかく鍋は何を入れても良い、というところが実にいい。
それだけに星の数ほどあるだろう。
ただ一般的な鍋料理はというと、やっぱり寒いところになるようで、東北は秋田の「きりたんぽ」に「しょっつる鍋」。山梨は「ほうとう鍋」。北海道は「石狩鍋」などが上位に来るようである。
ほうとう鍋に欠かせないカボチャだが、実に味をやさしく甘くしてくれ、心も体も暖かくしてくれる。
我が家ではカボチャの代わりにサツマイモを使ったりするが、これも結構いける。(一度お試しを)
「ところで北国は鍋どころとして南、我が鹿児島ではどうかというと、鍋というと『すき焼き』ぐらいしか記憶がない。
それも今思えば肉は「牛」だったのかもあやしい」
さつま汁などとあるが、鍋というより煮物になるだろう。
ともあれ上位の鍋もいいが、今は金沢人。
個人的に一番鍋を決めろ、と言われると僕の場合躊躇なく「カニ鍋」である。
もちろん「ずわい」に限るが。
がしかしあの値段、我が家の家計ではそうそう食べられない。
そこで色々な鍋を楽しんでいるわけである。
具材は豪華に越したことはないが、安い具材でも楽しめるし、また失敗のしようがないのが鍋のいいところである。
最近はトマト仕立てまであるように、味付けも実に多彩にある。
すき焼きの甘辛さに始まり、みそ仕立てもよいし、いしる・しょっつるの魚醤もよいし、豆乳鍋もよい。
また塩だけでもよい。
軽く味付けする寄せ鍋もよいし、水炊きでポン酢は鍋の王様として、中華はホーコー鍋(火鍋)も美味い。
ところで中華といえば最近密かに流行っているのが「ピェンロー」だろうか。
中国はチワン族の料理らしいのだが、実に手軽で安くて、白菜が実に美味しいという事なのでわが家でも先日やってみた。
簡単に書いてみよう。
手間と言えばたった一つ、前日より干しシイタケを水で戻しておかなければならない。
戻したシイタケの茎を切り取り、適当な大きさに切り。鍋に戻し汁ごといれる。
白菜を大ざっぱにぶつ切りにし入れ、豚バラと鶏もも肉を適当な大きさに切り放り込む。
そのまま2〜30分火にかけ、食べる数分まえに春雨を乗せ、ごま油を垂らして出来あがりである。
味付けは一切しない。
その代わり小鉢に少量の塩と七味で各自調整しながら食べる、という実に簡単鍋である。
食べると、干シイタケの味とブタ、鶏肉のいいダシ汁が出ている。
結果白菜が実においしいのである。
やってみると「なるほど」とつい口に出た。
「白菜が美味しい」というともうひとつ紹介したい。
これはある落語家がまだ売れない頃の鍋、その名も「省エネ鍋」と呼んでいた。
さすが落語家シャレが効いている。
まず白菜をぶつ切りにし、ある程度鍋に入れ、そこに豚コマを並べる。
また白菜を乗せる。そしてまた豚コマを並べ、また白菜を乗せる。ようするにコンモリと何層かのサンドイッチにするのである。
後は蓋をして中火で炊くと、どっさりの白菜から十分の水気が出てくる。
後はポン酢で食べる。余分な水分を使っていないだけに、実に白菜が美味しい。
かるく塩を振ってもよいし、ポン酢ではなくみそ味にしても実に美味い。
ということで冬は寒いからこそ、この暖かい料理が僕たち、みんなの体を中から温めてくれ、心もあったか〜くしてくれる。
実にありがた〜いのが、鍋料理なのである。