今回は酒にまつわる、ちょっとした小噺である。
ある酔っ払いの話。
“人間の体を作ったのは、神様だか、仏様だか知らないが、とにかく俺は注文がある。
折角いい酒を、静かに、長く、じっくりと味わいたいと思っても、口に入れた途端、あっという間にのどを通り過ぎてしまう。
これではあまりにも酒がもったいない。次からは鶴の首のように長く作ってもらいたい”
という日本の小噺であるが、どんなものであろうか。酒へのいじましさがよく出ている。
次は中国の小噺である。
“中国に、一杯飲んだだけで3年間は酔いがさめない、という素晴らしい酒造りの名人がいた。
そこへ一人の男が是非飲ませて欲しいとやってきた。
一杯差し出すと美味そうに飲み干すと、すぐ心地よい酔いが回ってきた。そしてもう一杯欲しいという。
名人は「この酒は一杯で3年間は酔うほどの仙酒なのだから、早く帰って寝るとよい」と言ってそれ以上は出さなかった。
男はほろ酔い加減で家に帰り、そのままごろんと横になると、深い眠りに入った。
その後何日経とうが目を覚まさない。家族は酔死したものと思い、泣く泣く埋葬してしまった。
やがて3年の月日が経ち、名人はそろそろ目を覚ます頃だと思い、その家を訪ねてみたところ、
土の中へ埋めてしまったというではないか。急いで墓地へ行き掘り起こしてみると、男が背伸びをしながら出てきた。
「ああ、実にいい酒だった。今何時頃かなあ」とまあ、3年間も眠り続けていた事など、まるで知らない。
それはよいとして、その時男が吐いた酒臭い息を嗅いだ家族達は、その場に倒れ、3日も酔いつぶれたという”
さすが中国四千年、話がでかい。
最後は日本の下戸どうしの話しである。
ひとりの下戸が「あたしぐらい酒の弱いものはありませんよ。この間、酒屋の前を通っただけで酔っちゃったんですよ」と言った。
もう一人の下戸は、その話を聞いただけで酔いで顔が真っ赤になった。
という上には上?がいる、という話しで今回はおしまい。