本ページは数回前に「衒学的・・はて?」というタイトルで書いた中で「水上滝太郎」の「果樹」より夫婦の会話の一シーンを引用というか、
原文のまま書いた事があったが、今回もまた引用、ひょっとしてちょっと長いので盗用になるかもしれない。
衒学的・・のなかで松本清張などにも触れたが、それを読んでくれた、また過去にも<ロブロイストの日々>に、
「シングルモルトとの遭遇」というタイトルで書いてくれた「森下氏」と本談義をしていたところ、それから数日して彼が「久しぶりに読んでみると、やっぱり面白い」といってあの名作、
ヘミングウエイの「老人と海」を持ってきてくれた。
いつ読んだか忘れたぐらい昔に読んだ記憶があるが、彼の言うとおり最後までしっかり楽しめた。
名作なだけに映画にもなっており、小舟ではあるがその船以上に大きいカジキマグロと老人は格闘し、しかししっかりと船の横へ括りつけた。
がしかし、やっと港へ着いた時には頭と、後は身を綺麗に包丁で裁いたようにサメに食われ、骨と尾ヒレだけになっていたのが、実に印象に残っている。
老人は小舟でひとり沖に出る。そして狙い通り大物のカジキマグロを釣るのであるが、その格闘の四日間を書いたものである。
老人と海とカジキマグロ以外は登場しない。
それを延々と「長編」として書く、そして読者を飽きさせない。
世界のヘミングだから今さら僕などが感心しても、何やら白けるような気もしないでもないが、やっぱり凄い。
実は一回読んだだけでは飽き足らず、また読み返しているところである。
で、また紹介したくなったものがあるので原文のまま「盗用」してみよう。
向田邦子---父の詫び状より「猫」であるが、残念ながら猫にはちょっとしか触れていない。・・・原文のままである。
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(猫は)顔には何故か手加減している。絶対に爪を立てたりしない。
この事をわたしはいつも不思議に思っている。
動物園へ行き、目だけを見る。
ライオンは人のいい目をしている。
とらは、目つきは冷酷で腹黒そうだ。
クマは図体に比べて、目が引っ込んでいるせいか、陰険に見える。
パンダから目の周りの愛きょうのあるアイシャドーを差し引くと、ただの白クマになってしまう。
らくだはずるそうだし、像は気のせいか、インドのガンジー首相そっくりの思慮深そうな、しかし、気の許せない老婦人といった目をしていた。
キリンはほっそりとした思春期の、はにかんだ少女の目。
牛は、妙にあきらめた目の色で、口を動かしていたし、馬は人間の男そっくりの哀しい目であった。
競馬場でただ走ることが宿命の馬と、外れ馬券を千切る男たちは、もしかしたら同じ目をしているのかもしれない。
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さすが大作家である。
動物の「目」だけで、これだけ色々な表情に書きわける。
また最後の「走るだけの宿命の馬と、馬券を千切る男たちは、同じ目かもしれない」・・・とは上手く書くものだ。
それでつい先日みかけた新聞のコラムの中に珍事ではなく「椿事」(ちんじ)とあった。
前後の文のながれから、珍事と同意後のようなので、はて?、電子辞書で早速調べてみると、
---珍事・・・思いがけない出来事---
---椿事・・・意外な出来事---
思いがけない、と、意外な・・ふ〜ん。
「ちんじ」からそのまま進んでいくと、「ちんぽ」となり、(幼児語)ちんこ・ちんぽこ、とあった。