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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

名荷(みょうが)と茗荷(みょうが)

毎年のことであるが、富山は嫁さんの実家から行く度に何かしら野菜をもらってくる。
別に農家ではないのだが家の隣に畑を借り、家庭菜園としてしっかり楽しまれているようである。
ネギ白菜にはじまり、カボチャ、ジャガイモ、アスパラガス、ナスにキュウリ、フルーツはスイカぐらいだが、とにかく新鮮な野菜を頂けるのは実に有難いし、重宝している。
そのなかに茗荷(ミョウガ)もある。

ミョウガというと、昔はバカになるとか、物忘れがひどくなる、などと言われていた。
そんな事があるはずはなく、これはある説によるらしい。

その昔、釈迦の弟子におそろしく記憶力のわるい、ようするにバカが居たらしい。なんせ自分の名前すら忘れるほどである。
そこでせめて自分の名前ぐらい忘れないように首に名札(これをなぜか名荷“みょうが”といった)を掛けたところ、その名札を掛けた事すら忘れてしまうほどであったらしい。
そこでたまたま名札の「名荷」と食べる「茗荷」(読み方も、字もほとんど同じ)というところからこの説が生まれた、ということらしい・・・。
話としては面白いのであるが、それにしてもよくそんな出来の悪い者を「釈迦」が弟子にしたものである。

去年の秋の事になるが、嫁さんの実家でそのミョウガの話になり、お父さんより「根っこを持って帰り、家の裏に植えとけば何もしなくても毎年いやでも出来る」というお言葉。
この「何もしなくても毎年いやでも出来る」という有難い言葉が気にいり、貰ってきて家の裏に植えた。
幸いに日の光をあまり好まないらしいのでミョウガにとっては良い環境のはずだ。
ところでいつもミョウガは貰ったり、買ったりして実に身近な食材であるが、栽培風景とか収穫の様子など今まで見たことが無く、なにやら興味深い。
さて今年になり、春になり、茎らしきものが出てきて伸び出したのだが・・・。

家庭菜園というと庭のない我が家ではベランダで毎年、プチトマトとゴーヤとパセリを育てている。
それぞれ実に簡単でよい。
一応肥料もたまにやっているが結構適当でよさそうであるし、ひと苗で十分収穫できる。
プチトマト・ミニトマト・ミニートマトとかそれぞれどう違うのかもわからないまま毎年買ってくるが、まあ良く育つ。
ブドウみたいに12〜3個の房になり、その固まりが20個、30個とできるので数えると300や400個となる。
そのうちに食べ飽きてくると干しトマトにし、オリーブオイル漬けにしておくと、主にパスタ系に重宝する。

ゴーヤであるが、今はやりのグリーンカーテンにするにはそれなりの株数が必要となるがそれをやるとまず食べきれない。
これも一家にひと苗で十分だ。
そもそも癖のある食材、そうそう日々食べるものではなく、ひと苗でももてあまし気味である。近所におすそ分けしたとしても、必ず喜ばれるとは限らないので気を付けよう。
と言ってもその家庭の食生活が分かるはずもないので、気を付けようがないが。
事実我が家のベランダにゴーヤが生っている事を知らずにゴーヤを頂いたりする。
一応「これはこれはありがとうございます」と僕はいう。

パセリであるが、これも一株で十分である。
ある年に買ってきて鉢植えするとほど良く成長してくれる。
大きい葉を摘むと、待っていたように控えていた小さい葉がニョキニョキと成長しだす。
大きい葉を摘まないと、小さい葉はじっと目立たず、けなげに控えているようである。
上手く出来ているものである。 一年目にお気に入りとなり来年も、と思っていると春になり、また青々と芽が出てきた。
アレレっと思い調べてみると「二年草」だそうである。
「一年草と多年草」しか知らなかった僕は、ヘーッと思いつつ、ひょっとしたら「三年草・四年草」とかあるのかもしれない。
これもパスタ系には欠かせられない。

さて去年の秋に植えたミョウガであるが、春になり茎が幾つも出てきた。
そしてあまり日の当らない家の裏でぐんぐんと育つ。
しかしあのミョウガは見当たらない。
そんな話をお客に話したところ「初年度は花つきが悪い」ということだった。
少しずつそこの土壌に合わないといけないらしい。
その代わり根付くと何もしなくても(肥料も水もやらなくても)延々と出来るらしい。 それは酔い良い(よいよい)と思っているところへ先週覗いてみたところ思いがけなく、ほんの一個だけ土の中からひょいと顔を出していた。
この歳になり始めてみる光景である。
僕は我が子のように喜び、軽く土を掘るようにして収穫した。

貴重で初の、神々しくもあるその一個を水道で綺麗にし、テーブルに置き記念撮影だ。
テーブルへ無造作に置いてはミョウガに失礼かと思い、たまたまツルの形をした「箸置き」があったのでそれを枕にして角度を変えながら何枚か撮った。

ミョウガを記念撮影

さて次はおごそかに頂く事としよう。
いつものように単に薬味として切り刻むには貴重な一個目だ、ちょっと忍びない。
そこで縦にして千切りにした。そして三杯酢で食べてみた。

味は・・・いつものミョウガでありました。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。