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(C)2003
Somekawa & vafirs

かくして平和な酒場は・・・・・

いつもと変わらない平和なある熱い夏の日の事です。

九時近くになり、いきおいよくドアが開くと
「オバンでがす〜」
別にオバハンが来たわけではない、35〜6の威勢のいい男である。
「イヤ〜金沢もあちぃでげすなぁ、まんずビールぉばケサイ」
と、始まった男は岩手の農業試験場から金沢へ視察に来たとの事。 昼は芋掘り藤五郎とあがめたてられ、夜はべちょこ荒らしの金太と、若い女性から恐れられているらしい。
「兄んさべちょこ好きがへ」
と言いながら、ボトル棚から目ざとくラム酒の25年ものを見つけると、
「イヤ〜こりゃあまた珍しいっす、まんずあのラム酒ぉばケサイな」
「コッ、これはウメエッす」
と、やっているところへこれまた30代であろう男がやって来た。

「イヤ〜熱かごとねえ、鹿児んまも金沢もいっちゃんと変わらんとじゃなかねえ、ほんにまあ」
と言いつつ、オールド・ジョーストレートで、とくる。10年物の腰のあるいいバーボンだ。 そしてクイッ、クイッと飲りながら始まった。 昼は薩摩のぼっけもん(頼りがいのあるいい男)夜は風の又三郎と、呼ばれているらしい。

なぜ風かと言うと、擦れちがいざまに目にも止まらぬ速さで服を脱がし事を終え、服を元通りに着せる。 そして風のように去っていくのだそうである。 脱がして服を着せるまで、とにかく目にも止まらぬ早さゆえ、相手はもちろん、本人もまったく感触、自覚がないらしい。 結果的にいまだ童貞だと自慢している。 バーテンと岩手の芋掘り籐五郎は実に、バカバカしイ事を聞いてしまったという風。と言ってもニヤニヤしながらではあるが。

それから、岩手んひとでゴワスか、ケゴスマのストでげすか、 まあ飲むべえ、飲むもはんか、とやっているところへこれまた30代の男。

「イヤ〜金沢あつうおまんなあ、汗でビショビショでんがなあ、先にヨウ〜冷えたビールもらいまひょか。 イヤハヤほんまどないでっか、皆はん忙しおまっか、あきまへんか、まあぼちぼちいきまひょ、さあ飲みまひょ、やりまひょアヘホヘ」
と言いながらまだつづく、

「ヘエ〜色んな酒がありますのやなあ、わてさっき焼肉屋さんでカクテキ食べてきましたさかい、カクテルにしまひょかなあ・・・?」
とまあ彼が注文したのは・・・別にオチはない、ピンクジンである。 ネーミングの割にはかなり辛口のカクテルだ。そして例によってまた始まる。

「わては浪花のあきんどだス〜」
に始まり、大阪では後家殺しの玉三郎と恐れられ、若い子には早撃ちのジョー。またの名をコルサのジョー(これは単にトヨタ・コルサに乗っているからとの事)

という事で、岩手の芋掘り籐五郎、薩摩は風の又三郎、浪花は後家殺しの玉三郎、とまあツワモノぞろい・・・?

かくして三人の大宴会は始まった。さあのん兵衛ずら、ジャンジャン飲んもんそ、やんもんそ、 今日は徹底的にいきまひょかあほないきまっせえ〜、
 ひとつ出たホイのヨサホイのホイホイ・・・
 ひとりムスメと・・・・・これは全国共通らしい。

        平和な酒場の時は、今日も流れていく。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。