黄金!?人を欺く驚異の技術  〜 光琳・解き明かされた国宝の謎 〜

MOA美術館・蔵
国宝「紅白梅図屏風」

背景の金箔は継ぎ目を重ねて貼る。これを箔足(はくあし)といい屏風全体に見られる。しかし実際の金箔よりも金Auが半分しか含まれず、2枚重なった箔足の金Au含有量も2倍ではなかった。しかも刷毛で刷いた痕跡がみえる。金色に近い植物染料「かりやす(イネ科)」を塗ったあと、金箔を砕き溶かした金泥(きんでい)を重ね塗りしているのである。さらに箔足は線描であった。では何故金箔を模したのだろうか?辻氏によると擬作(ぎさく)といって本物に似せる作風が流行ったらしい。同時代に釉(ゆう)薬が見事な茶碗があるが漆であったことから推測できる。

中央の流水にも箔足があることから銀箔を貼り、酸化銀とすることで黒っぽくみえると考えられていたが、銀Agは検出されず青い色素が見つかった。流水のカーブを拡大すると直線の繋がりであった。そこで考えられたのが型紙による藍染であった。当時は型染めにより着物の多様化したデザインを大量生産する技術が急速に発展した。しかも光琳の生家は呉服業を営んでいた。

左右の紅白梅には溜込(たらしこみ)技法によるにじみで老木を表現している。ここで金箔が問題となる。金泥だから溜込によるにじみが可能となる。

光琳は晩年の自身を老木の紅白梅に写し、染物職人とのコラボレーションをプロデュースしたのである。

銀の波鮮やか紅白梅図屏風 制作当時の姿、CGで再現

江戸時代の画家、尾形光琳(1658〜1716)が描き、「琳派」を代表する作品「紅白梅図屏風(こうはくばいずびょうぶ)」(国宝)の制作当時の姿がCGで再現された。金地を背景に、黒い川面に銀色の波が立つ様子が鮮やかによみがえった。所蔵するMOA美術館(静岡県熱海市)で16日に開かれた研究会で発表された。

「紅白梅図屏風」をめぐっては、科学調査が続いていた。東京理科大学の中井泉教授(分析化学)らが結晶の状態などを分析し、昨年、背景は金箔と発表。今回、川の部分を銀箔と結論づけた。さらに川の黒い部分は、銀箔を変色させた硫化銀と確認。それらの調査結果をもとに、CG画像はつくられた。(asahi.com 20111217)
to Favorite