最近のテレビでクローン人間が誕生したというニュースが流されました。
それは事実かということで、世界中が大騒ぎになりました。
しまいには日本人にもクローン人間が生まれたということが発表されて、
他人事ではなくなりました。
しかしながら、親子が明かされないということで、
真偽のほどはうやむやのまま報道されなくなってしまいました。
羊や牛でクローンが生まれているのですから、
人間のクローンを作ることは技術的には可能なのでしょうが、
倫理的な問題があるということで
現在では世界的には認められていないようです。
思い起こせば、今から27年ほど前に、
わたしの長男が生まれたのですが、
ちょうど同じころに日本初の五つ子が生まれて、
日本中の話題となりました。
その頃から不妊治療のひとつとして排卵誘発剤という薬が使われ始め、
そのおかげで妊娠できなかった人にも子供ができるようになりました。
ところがその薬は卵子を一度に多く排出させるため、
多産児ができるという副作用があったのです。
そのために五つ子の生まれた家庭の子育ては、
並大抵のことではなかったようです。
最近では五つ子などはなくなりましたが、
それは妊娠中に間引きをして、
一人や二人にして生んでいるのだと聞いてショックを受けました。
また、双子を妊娠した女性が、
医者から「二人共産みますか、それとも一人にして産みますか?」
と尋ねられて驚いたという話も聞きました。
昔は「子供は天からの授かり者」と言われていたのに、
現代では子供のいのちは、
親の都合によって左右されてしまう時代になったようです。
このように現代では
子供の数や男女を自由に産み分けることが当然のように行われていますが、
経典にはガンジス河の砂の数ほどのご縁をいただいて、
今の「いのち」が成り立っているのだと説かれています。
ガンジス河の砂の数など数えられないでしょうが、
それは人の思いを超えているということで、
思議できないことから、不可思議といわれます。
そんな不可思議なご縁をいただいていのちが成り立っているのですが、
そのいのちをあたかも親のものであるかのように、
自由にしようとしているのが現代社会ではないでしょうか。
仏教ではいのちは平等なのだと教えています。
それは生きとし生けるもの総てが、
縁によって人となり、
また他の生き物となっていると教えているからです。
また、世間では親から子が生まれるというような言い方もしますが、
仏法ではそれも間違いだと教えます。
子ができたから親になるのであり、
子ができる前に親ということはありえないわけです。
ですから、親も子も本来同時に成立するものです。
そのように平等であるはずのいのちを
自由に操作しようということは大変な問題を含んでいると思われます。
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