8.スキャンティの歌

 

あれは、いつの頃だったかなぁ。中学生の頃家に電話がかかってきたんだ。

俺  「はい。○○ですが」
謎の男「・・・・・・」
俺  「どちら様ですか!」
謎の男「・・・・・・・・ す・きゃ・ん・て・ぃ」
俺  「はぁ!?」
謎の男「スキャンティって、何かな?」
俺  「何って、その、あれじゃあないですか」
    何故か敬語になってしまう俺。
謎の男「だからね。私が聞きたいのは、スキャンティって
    何かを聞いてるんだよ。知らないのかい?」
俺  「いや、知らないとかそういうのでなくて。。その。。」
謎の男「知らないなら知らないって言えよ。」
俺  「知ってるよ。」
謎の男「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
謎の男「頼む。教えてくれないか?」
俺  「分かった。女性がはいてるやつですけすけなやつだ」
謎の男「それは、パンティのことか?」
俺  「多分、その一種だと思う。」
謎の男「透けてるパンティと限定できるのか」
俺  「・・・・・・・・・・・・・・・・」
謎の男「それならば、水がかかっている通常のパンティは、
    スキャンティのようだ。という表現は可能なのかい。」
俺  「いや、どうなんだろう。。。。。」
謎の男「だから、君は・・・・・」
俺  「うん?だから、なんだよ。」
謎の男「おまえはスキャンティについて何もわかっちゃいない」
俺  「そうなのか。。。。。」
謎の男「結局、おまえはそれだけの男なのさ。スキャンティ、
    スキャンティ、スキャンティ。。。(以後繰り返し)」
俺  「やめろ!うるせぇよ。てめぇ」
謎の男「スキャンティの意味も知らずに一丁前な口聞くなよ。ガキ!」
俺  「。。。。。。。。。。。。。。」
謎の男「じゃあな」
俺  「うん。」

何だったんだ。あいつは。誰だったというのか。俺に何故、スキャンティ
について問いただすんだ。確かに俺は、エロ本でスキャンティをはいている
女をじっくり見ていた。いや、あれはエロ本でない。あれはビニ本だ。
ということは、ビニ本はエロ本の一種だな。うんうん。      
そんな風に俺は、スキャンティについて考えたことが、俺と哲学との出会い
だったと思う。
管理人さん。人間とは何か?どのように生きてるのか。どこに向かっていく
のか。。。。。。そんなことなんて所詮、「スキャンティとは何か」という
ことと同じなんだよね。

                        



いやぁ〜同じなんだよね、って同意を求められてもねぇ。懐かしい言葉では
あるな。スキャンティ・・・・・でも、けっこう可愛い響きを持っているじゃ
ないですか。それよりも「俺」と「謎の男」との会話。。。不条理な会話で
ありながら迫力があるなぁ。これって、現実のことなのか?だとしたら、
投稿人もけっこう、スキャンティな人と言えるな。そういう私もスキャンティ
な俺(笑)最初に丁寧な口調から最後は叱られてしまったな、投稿人。
   


9.暗い聖域

 

独居老人と一言でいっても実に様々な生活があるものだと、この仕事をしていると

しみじみ思います。

薄暗い古びた家屋に住むSさんも、そんな独居老人の一人です。修繕の行き届かない

室内は傷みがひどく、台所の流しは朽ち果て、水仕事は風呂場で行うしかありませ

ん。

そんな状態ですから、近所の方はもちろん身内の方でさえ訪れることはありませんで

した。それでも、おしゃれなSさんは、いつも赤い口紅をさし、その毒々しいほどの

赤い唇で「いらっしゃいませ」とヘルパーを迎えてくれるのが日課です。


訪問を始めて間もない頃、風呂場で食器を洗っていると、使用していない浴槽の中に

野菜くずが落ちていました。特に気にもとめず、浴槽の中にかがみ込むように手を

入れて拾い出し、生ゴミとして捨てておきました。

そんなことが2〜3回続いたある日、今度は浴槽内にたくさんのお米がこぼれていま

した。捨てたらいけないかと思い、Sさんに尋ねてみました。

「Sさん、浴槽の中にお米がこぼれていますけど、どうしましょう」

「あら、いいのよ。そのままにしておいてちょうだい」とSさんは当然のように、おっ

しゃるのです。

そうは言われてもそのままでいいのかしらと迷っていると、釈然としない私の気持ちを

察したのか、「気が付かなかったかしら?今までも時々食べ物が入っていたでしょう」

と、楽しそうに話し始めました。「あれはね、エサなのよ。飼っているのよ」と

赤い唇で微笑みながら、そう言葉を続けます。

そうなのです。Sさんは「人間は嫌いだけど動物は裏切らないからかわいいわ」と

老いた犬を室内に閉じ込めて家族同様に暮らしているほど、動物が好きな方でした。

野良猫やスズメにもエサをやり、それがSさんの生きがいになっているようです。

私は、ひび割れて汚れとカビで黒ずんだタイルの浴槽を思い浮かべながら、あんな

暗い閉ざされた場所で飼えるものには何があるのだろうと考えてみましたが、

皆目検討がつきません。

やがてSさんは「うふふ・・・」と笑うと

「ゴ○ブ○よ」と平然とおっしゃいました。

そう応えるSさんの赤い唇は、いつにも増して赤々とぎらついて見えました。


その後、食器を洗う時に浴槽の中を見てみると・・・・確かにいたのです。

黒光りするアレが・・・・もしかすると暗い風呂釜の中はアレの聖域なのかもしれま

せん。

それからは「来るな、来るな、こっちへ来るな。飛ぶんじゃないぞ!」と念じながら

そそくさと風呂場で食器を洗う私でした。


はにわ様。そりゃ気持ち悪い。げぇええ!いやあ、やはり奥深いなぁ。ヘルパーさん
の現場って(笑)。恐怖の風呂釜・・・・・・ゴキブリを飼う独り暮らし老人。うーん。話し相手
のいない孤独さはゴキブリさえも友達にしてしまうのでしょう。しかし、スキャンティと
いいゴキブリといい奇妙な人って、多いんですねぇ。


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