夢の構造

夢の構造には5つの特色があります。

1.夢の「状況」

「もの」 「事物」 「場所」

 

2.「人物像」

ひろく生き物と取る。夢をみている本人(夢主)や夢主が傍観者

になって、他人が登場していたり、人でなく動物が出ていたり、

「この世のものでないもの」がいたりする。

 

3.「行動」

夢主や他人などが何かを「する」。動き回ったり、とまっていたり

泣いていたり、黙っていたり、何もしなかったりする。

 

4.「情動的なもの」

情緒、情動、感情状態。不安な夢だったり、うれしい夢だったりする。

 

5.「象徴的表現」

夢には時々、訳の分からないものがあったり、人がいたりする。

何でこんなものがあるのか、いるのかよくわからないことが多い。

これらは、抽象画の絵画のように、「もの」「ひと」が怪しいのでなく

一つ一つは、きちんとしているのに、そこにある位置や全体のバラン

スがちぐはぐである。これらは「何かを表している」ことが多い。

 

これら5つがそろっていると、一軒の家になるのですが、時には、

窓がなかったり、壁がなかったりする。例えば、1.の「状況、事物」

が抜けていると、「どこかわからない」夢になる。

2.の「人、動物」が欠けていると、ただの風景や、数式という夢をみる

こともある。3.の「行為、動作」が抜けると、2.が抜けたような、数式や

言葉の夢だったりする。

4.の「情動」が無いと、当たり前の夢で、特別な感情が示されないたん

たんとした夢となる。

5.「象徴的表現」が欠けていると、分かり切った象徴がない夢となる。

 

これら5つが夢の柱です。このうち、どれかが欠けると(すべて揃っている

ことは少ない)、逆に、その夢の特色を知ることが出来るでしょう。


○夢を分析する

ここまで、すすんでみて、少し困ってきました。随分、簡単に書いているが、

夢分析を説明するのは、相当難しい。以下、端折った説明を進めていきます。

 

1.夢の中の状況を現実と結びつけられるもの

日頃でてくるもの、状況は素直に「夢はこの領域を問題にしている」と考える

べきです。

 

2.現実と結びつけられない状況

50歳をすぎているのに、子供時代に学校に行っている夢をみるとか、老人が

若い女性の横に寝る夢とかは、これらは、「よくわからないから無意味である」

というわけにはいかない。むしろ、ゆっくりと状況を連想していくことになる。

たとえば、子供の頃はよく遊んだなぁ→最近は、忙しくてまったく遊ぶ暇がない

→息付く間もなく仕事している→子供の頃はたくさんの友人と遊んだが、最近

は1人が多いなぁ、などと現実と対比させると上手くいく。この連想が、夢分析

においてのポイントとなる。

 

3.夢のなかの人物、動物など

@先の状況と同じく人物が現実に結びつけられるかどうかである。夢のなかに

出てくる現実の人物は、その人物の見えていない特徴まで浮き彫りにすること

が多い。ある日、「友人が美しい鳥となってとぶ夢をみる。とても美しいが、そ

の鳥が模型だとわかる。」私は、その友人と仲が良いが、実は、しっくりいかな

い。その理由が、夢に出てきている。飛翔する鳥は美しいが、それは、生きて

いないのであり、人工的なものである。何かの模倣である。この友人の人格診

断を夢は深いところでおこなっているのだ。


A夢のなかに出てくる人物が現実と結びつかないときは、どうするのでしょう。

これは、姉なのだが顔が友人とか、職業は違っているとか、自分が学生だが、

教師として出ていたりする。違和感を感じているものです。これら、現実と結び

つかない人物などの分析は、難しいものです。なぜなら、単純に、要素で分解

することに意味がないからです。これらは、まず、「属性」を考えます。

友人なら、「あの人は目立たない人だった」とか、「ドジだった」など。また、虫、

動物が出ることもあるが、これも「属性」を考えるわけです。蛇に追われる夢なら

「蛇」は「不気味で、嫌なもので、積極的に取り組みたくないもの」で、これに追わ

れていると考えてみます。

こう考えると、夢に登場する人物、動物、生き物を夢主の内的世界の断片と捉え

ることが出来ると考えられます。

「父」なら「父的なもの」、「統制的なもの」「社会的対面」「家族を代表するもの」

「母」なら「女性的なもの」。「ウジ虫」なら自分の「ウジ虫的側面」と考えられます。


以上のようにみてみると、夢分析には少し、矛盾を感じるでしょう。

夢のなかの「友人」は「友人」を示しているし、夢主自身の心的世界の友人的側

面を示しています。変なようですが、これが夢の特性であり、フロイトは多重決定

性と言いました。要するに各要素に広く焦点をあてるか、深く狭く焦点をあてるか

で解釈は変わってはくるのです。だから、いろいろな角度から夢の内容に接近し

解釈を深め、広げていくものであると言えます。


4.夢のなかの行為、活動について

夢のなかでも、夢主が、積極的な性格の場合、大概は、積極的な夢をみます。

受け身的な人の場合、受け身的な夢をみる場合が多いです。例えば、追いつ

められた人が、高い崖から飛び降り、海に落ちて、泳いで逃げていく・・・・

とても、行動的な夢ですが、これを日頃、引っ込み思案だと思いこんでる人が

みた場合、どうでしょうか。夢は、日頃、私たちが意識するより、ずっと、本質的

な自分の特性を示す場合が多いので、否定しないで、受け入れた方がいいので

す。「自分の内に、こんな積極的なところがあったのか」と考えていくべきなのです。

 

5.夢のなかの感情状態について

「追われていて恐ろしい」「大変不安だった」「悲しかった」など、夢には、情動や

感情があるが、これは、大変大切で、同じ夢でも、追われる夢で「別に怖くなかった」

と「大変怖くて、目が覚めたら冷や汗をかいていた」という感情状態なら、まったく

解釈が異なるということである。

普通と違う感情が示されるときはどうだろう。「葬式に出て、うきうきした」「殺人を

したが、何も感じない」・・・・・・感情があるはずのところで欠落した夢、もしくは、

過度の情動がある場合、精神に病がないか疑ってもいいかも知れない。

これは、精神病の発病が睡眠から覚めるときに起こることが多いことも、興味深い。

妄想型分裂病の場合、夢から現実に戻らないとも言えるだろう。夢のなかで、虫が

体中を這いまわる、目が覚めてもその虫が身体を這いまわっている・・・・・・

このような夢が続くならば、精神科外来の受診をしてみてもよいかもしれない。

 

6.夢のなかの象徴的なもの

象徴はとてもやっかいなものである。すべての象徴を単純化すると意味がつながらなく

なってしまう。例えば、「棒」→「ペニス」、「箱」→「ヴァギナ」といった具合には・・・・・・

ただ、難しいのは、そういうこともあるということである。

 

○診察室無理矢理、連れ込まれた女性が、予防注射を深く深く、腕に刺された、叫んでも、

だれも助けてくれない。心身共に疲れ果てたところで、目が覚めた。まだ、身体の内部が

じんじんするようだ・・・

これらは、性的外傷をうけた女性の夢であるが、そのとおりと言える夢で痛々しさが、伝わっ

てくるようだ。

ただ、実際の夢の解釈では、注射をペニスとステレオタイプ的には、解釈しないであろう。

注射における夢主の連想が、痛いもの、硬質なもの、自分の嫌いなもの、攻撃的なものと

人により違うものである。この夢では、夢主の体験から、強姦のような強要された性的体験

がみられるのであり、すべての女性が注射をペニスの象徴として夢とみるわけではないとい

うことである。

 

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