夢の秘密を解き明かすことは、古今東西、どこの国の文化でも
ありました。日本にも、古事記、日本書紀に「夢判断」が示され
ていました。
このような夢判断を初めて科学的に考察したのがジグムント・フ
ロイトです。1900年に彼は「夢解釈」を著しました。ご存じのよう
にフロイトは神経科医であり、精神分析の創始者であります。
夢は自分自身の現実生活をしのぐ、広い世界があったと気づか
せられ、楽しいことと同様に、自分が隠しておきたかった真実に
も気づくことになります。
簡単な夢分析
日常生活と変わらない夢があります。これらは、夢の内容から
簡単に分析可能です。
★「起きて出かけている夢」
朝起きて、顔を洗い、服を着て、朝食を食べ、玄関を出る。
☆実際には、まだ寝ていて、学校に遅れそうになる。
分析・・・・・・単純な願望充足の夢です。これらは、幼児期や学童期
に見る場合が多いです。もちろん、雪山で遭難したときなどに見る
温かい部屋で食事をゆっくりとっている夢なども、この仲間です。
★「外的刺激や身体的刺激が直接反映される夢」
おしっこをずっと耐えていた。ああ、あそこにトイレを見つけた。ふう、
すっきりした。
☆目が覚めたら、おねしょをしていた。
ふとんを探している。どうしても、見つけなければ・・・・・
☆目が覚めたら、ふとんが飛んで行っていた。
分析・・・・・・気持ちよくおしっこしたら、夜尿だったとか、誰かが、
名前を呼んでいる。目を覚ましたら、授業中先生が呼んでいたなど
直接身体的刺激が夢をつくったものです。
★「死の予告」
自分の妹が夢に出てきて「大変お世話になりました。それでは・・・」
と空に舞い上がっていった。
☆同じ時刻に、他の家族が、同じ夢をみ、その時間に妹が息を引き
取った。
分析・・・・・このような夢は、正夢、夢枕として有名である。肉親や深い
関係の方が亡くなった時間や事故の時間と一致してみるものです。
このような現象をユングは同時性(Syncronicity)という概念で説明して
います。偶然の一致ということです。もちろん、テレパシーと考える人も
います。このような現象は、我々が深い関係の人において、私たちの
意識を超え、事態を深く感知する能力が備わっているということでしょうか。
予知能力の優れた人は、もともと予言者として大切にされたが、反対に
悪魔、奇人として迫害され、殺されたりもしたのです。
★「警告の夢」
自転車で学校に行こうとすると、タイヤがパンクしている。あわてて直そう
としたが、学校に遅れると焦った。パンクはなかなか直らない。目が覚めて
も不安な気持ちが残った。
分析・・・・・このような夢をみた後は、現実の自転車・自動車の足回りの
チェックをおこなった方がいいでしょう。なんとなく調子が悪い、違和感が
あると昼間ぼんやり考えていることを、夢は注意を促しているのです。
私たちは、鋭い知覚能力を持ってはいるのですが、昼間押さえる傾向に
あります。夢は、この知覚能力をはっきりと蘇らせてくれるのです。
夢の「警告的」な部分を無視したり、理解できなければそれが、ある意味、
「正夢」になると思われます。
ユングは、このような「予告の夢(夢告)」をいくつか挙げています。
★私は高い山に登っている。雪に覆われた険しいスロープである。私は高く
登る。高く登ると、気持ちがいい。頂上に着くと、私の幸福感は絶頂に達し、
そこから更に、空中に向かって登り始めるのでないかと感じた。
そして、実際に私は、空中を登っていけるのだった。私は、空中をまっすぐ
登っていき、まったく恍惚状態になっているところで目が覚めた。
☆この人は、2ヶ月後、登山の途中で、実際に空中をさまようように、岩場に
転落し、死亡しました。
★
分析・・・・・このような「警告の夢」は大変印象深いものである。夢のもつ知覚
能力を無視するより、現実に生かす方がどれほど良いことか。私たちは、可
能な限り、現実と照合し、吟味すべきでしょう。
夢の警告は有意義なものであるとご理解されたでしょうか。ただ、問題があり
ます。夢をみなければ、どうにもなりません。大きな決断をするときは、日本は
古来より、おこもり所に入って、夢をみたのです。こうして授かったのが夢の
「お告げ」です。聖徳太子も八角堂の中の救世観音の前でおこもりをし、夢を
授かったといいます。(後に八角堂のおこもり堂を夢殿と呼んだ。)
夢をみて、その警告を現実と吟味し、行動を決める・・・・これは、金のかからない
占いと同じ事ですね。夢をみるひと(夢主)は、自分自身で、実行するのも自分
です。易者のステレオタイプな話、解釈を聞く必要もないし、他人の意見に惑わ
されることもない。
そうなると、人生の大きな出来事(出生・結婚・就職・病気知人の死・旅行)の前
には、夢に気をつけた方がいいです。
★
★就職不安の夢
彼は、人混みのなかを歩いていました。混雑して、なかなか前にすすみ
ません。すると後ろから、ダンプカーがものすごい勢いで突っ込んで来て
います。しかし、彼のまわりの人々は、同じ歩調で歩き続け、逃げようにも
逃げれません。彼は、いらいらし、前に進むのをあきらめ、真横に逃れまし
た。横には大きな道路が一直線に伸びていました。これなら、逃げ切れる
と彼は、少し安心しました。
☆22歳の彼は、大学を卒業し、いくつかの就職先に内定をもらいました。
彼は、その中で、公務員に合格したので、公務員として就職しようと
決めました。その時期にみた夢です。
分析・・・・・これも警告的な夢です。彼の就職について、公務員という安定し
た状況に喜びながらも、心のどこかで、納得していない。逃げようにも、
周りの人が同じ歩調で歩き、ズレた人を認めようとはしない。また、彼自身
周りを押しのけてまで、進む力強さは感じられない。危機的状況に対応でき
ない自分がいます。そして、彼は、真横の道に逃げ、そこから脱出を試みる
のです。いくつか内定のあった会社に、魅力を感じていることも事実であろう。
もちろん、この夢で分かるのは、彼の置かれている立場が、社会的な現実で
は、公務員を良しとしながらも、自分が上手く馴染めるか強い不安と葛藤を
感じているということです。この夢が正夢になるなら、彼は集団のなかで埋没
し、個性を殺し、死んでしまうということかも知れません。しかし、この夢を自分
でよく考え、吟味し、対応していくことです。準備をし、心構えを持つのであれ
ば、今後の対応は変化していくことになるでしょう。
それでは、具体的に夢を分解してみましょう。夢の構造について、考えてみま
しょうか。 夢の構造について