久しぶりに酒の話をしてみよう。
アイリークという、ちょっとふざけた酒がある。
どうふざけているかというと、ラベルにアイラモルト(アイラ島のモルト)とあるがどの蒸留所の物なのか表示していない。
次に「カスク・ストレンジ」とあり、これは樽出しの事である。
樽出しとは、樽の中にある状態のまま瓶詰めしたものであり、当然アルコール度数は高くなる。
通常は加水して、たとえばアルコール分43度とあるとすると、其の43度まで加水し、アルコール調整して瓶詰めする。
参考のために40度とか、43度と良く見かける度数であるが、そのような度数の原酒はない。
原酒というとバーボンでもスコッチでも50度以上から65度くらいになる。
この開きというのはそれぞれの蒸留所によって「我れんとこはこの度数が一番いいんじゃ〜、モンクアッカ」とスゴンでいるかどうかは分からないが、それぞれの考え方らしい。
もう少し説明しておこう。
先にどこの蒸留所の物か分からない、と書いたがスコットランドではボトラーズメーカーというものが沢山ある。
これは何かというと、自分では造らず、あっちこっちから樽を買う。
そして自分の銘柄として売るのである。
実にズッコイやり方であるが、これは違法でも何でもなく許されている。
さて冒頭の「ふざけた」と書いたのは、普通ボトラーズメーカーは「これはあそこの物なんじゃよう〜」とラベルに標記してある。
が、アイリークに関してはそれが無い。
何故か?
僕が想像するに、アイラ島は小さい島である。
その中に蒸留所は8ツしかない。
その気になれば全部飲んで(知って)みる事はそんなに難しい事ではない。(参考のために我がロブロイには今その中の5種類は置いてある)
で、たぶん遊び心なのであろう。
アイラモルトとあるのでアイラ島の物である事は間違いない。
その8ツの中から飲む人に託す・・・ようするに、さて「中身はなんでしょう?と想像しながら飲んでちょう〜」という事らしい。
とこう書くと「なかなか面白いではないかい」となる。
ある意味飲む側に「挑戦的」でもあるので「じゃあ、当ててやろうじゃないかい」という気にもなる。
ついでに同じようにもう一銘柄ある。
フィンラガンといってこれも同じようにアイラモルトであり、明かしていない。
また僕の想像であるが、両方度数はなぜか58度となっており、ひょっとしたらこの二つの銘柄、社長同志は親戚であり、
お互いに「一つより二つの方が面白いでないかい」と、たくらんだのでは、と思っているのだが考え過ぎだろうか・・・。(案外、当たっているかも)
ともあれ飲んでみると、両方とも明らかに別な蒸留所の物であり、度数は58度あるし、しっかり呑みごたえある。
さて、僕なりに「たぶん、これだろう」とあるが、いずれにしろ飲む側が想像するしかない。
ともかく、いい加減かつ挑戦的で・ずるがしこく・ふざけた酒も、たまにはあってもいいだろう、と思うが皆さま、如何でしょう・・・。