前回「腰が痛い」という話を書いたが今回も痛い話である。

先日わが家での事。
何やらあわてた拍子に柱の角に、思いっきり足の小指を打ち付けてしまった。
その痛みたるや、あまりの痛さに「イテ〜」という言葉も出ない。
ただひたすら手で押さえ、「クゥ〜」とくぐもった声を出しながら、ただ痛みの治まりを待つだけである。
ほとんどの方も一回や二回は経験されているはず、その痛さも分かって頂けるかと思う。
本当に痛い時は言葉も出ない。

柱の角に足の小指。
これなど分かりやすいが、大概の痛みは人に伝えるのは難しい。
またその表現も色々あるにはあるが・・・。
頭がガンガンするとか、ズキズキと痛い、またキリキリもある。
傷口がヒリヒリ・ジクジクする。
首がジ〜ンと痛む、またはジンジンする。
形容詞ではないが、錐で刺すような痛みとか、はらわたを抉られるような。
もっと激しいのは、焼け火箸をつっ込まれたような、とまあ表現には色々あるようだが、さてどのくらい伝わっているのだろうか。
むかし吉本のギャグで「尻の穴から手―つっ込んで、奥歯ガタガタ言わしたろか〜」とあったが、どんな痛みだろうか？

そもそも痛みはその時、その本人しか分からない。
痛みが治まりほんの数時間、ましてや数日も経つと、その痛みなどすっかり忘れている。
だから人が頭を棒で殴られたように痛い。（頭を棒で殴られた人はそんなにいないと思うが） ともかく大変に痛いと言われても「そうですか、それは大変ですねえ〜」と、一応は言う。
が、それだけである。
ちなみに我ながら痛みにはつよい方だと思ったりする。
数年前歯医者さんで抜歯するに当たり、僕は「麻酔なしで抜いてください」。
すると歯医者さんはびっくりしながらも「他の患者さんの手前、大声出さないで下さいよう〜」と言いながら抜いてくれたが、もちろん声など出さない。

痛みの度数があったとする。
昔バイクでコーナーを曲がり切れず転倒、左ひざをシコタマ打ち、激しく挫傷。
整形外科へ行くと挫傷もだが膝に水が溜まっている、という事だった。
当然抜かなければいけない。
医者はちょっと痛いよ、というと看護師が二人で足首と太ももの辺りをグイッと押さえつける。
何故か麻酔なしで太い針を膝の骨と骨の間（皿の下）にゆっくりズブズブ、ずぶっ〜と入れる。
そのズブズブの間、しびれかつ猛烈に痛い。
足が震えだす、クウ〜ッ。
看護師二人が押さえつけるはずだ。
水を抜きやっと治療が終わったと思ったがまだ痛い。
自分の足を見るとまだ針は刺さったまま、医者は薬を入れときましょう。
と冷静に言いながら、やっと針を抜いてくれた。
しかしまだ痛いし、シビレタままである。
とにかく初体験の痛さであった。

後日その話をお客であるＦ医師に話すと、痛み度数にすると５度くらいだろう、という。
じゃあ１０度はと聞くと、拷問とかは別として一般には出産だろうという事だった。
確かに男だったら耐えられない痛さ、とはよく聞いている。
ではその痛み１０度を経験出来る方法はというと、あるという。

まず上唇を両手でグイとつかむ。
そして思いっきり上に引き上げる、とうぜん痛い。
そのままどんどん上にもっていき、ズボッと頭の後ろへ持っていく、要するに上唇の帽子をかぶった状態となる訳だが、たしかに痛そうだ。
が、そんな事を出来るはずもないが、そのぐらい出産は凄いもの、の例えであろう。
世のお母様方に感謝しなければいけない。

先日病院での採血があった。
いつも「ちょっとチクッとしますよう、ごめんね〜」とは丁寧でいいが、失敗。
ちょっと採血の場所を移動。
そしてまた失敗。
今度は選手交代となり目出度く血を採ってもらえたが、１度目より２回目、２回目より３回目の方が痛みが増したように感じたのは、気のせいであろうか・・・。

さて痛み。
心のイタミの分かる人、でありたい。