加賀百万石の城下町をキャッチフレーズとした金沢という町のイメージがある。

旧市内をはずれると、町は趣きを変え、違う「顔」を持つ町に出会える。

それら近郊の町は、金沢が栄える前からの古い歴史を持ち、独特の文化や

匂いを放ち、時とともに歩んできた。

金沢という町に編成され、その個性をその名前の中に押し込め、または時の

流れに消えていきつつも、存在意識の中で保ってきた。

その匂いはたまらなくいとしく・・・・・・・。

浅野川、金腐川、大宮川、その他幾筋もの名もなき川が流れる大浦校下、

かつて水郷農業地といわれ、クリークを持つことを特色として歩み続けてきた

町。 クリーリ、それは「小さな運河」。 町の中を網の目のようにクリークが流れ、

人々は舟を使い、生活をした。 水と舟は、人々のコミュニケーションにかかす

ことのできないものであった。

町のルーツとしてのクリークを求めて、また、時を経た現代の姿から未来への

展望をふくめて、見つめながら、かつてクリークが存在した町を行く・・・・・。

写真集「ふるさと 水の郷」 大浦を歩く より


@ 金鞍降り

ある日、村人達が競馬の宴を営んでいたところ、騎具が無く、なげいていた。

そこで神主が神に祈り拝すると、たちどころに空中より金鞍が乱れるほど多く

降ったという。

A 五色八重梅

本願寺第八世蓮如上人が木越村に逗留の際、上人に帰依した道休に、上人は

自分のつく梅の杖を倒植した。するとその後、この梅は花と実が同時につき、かつ

白 ・ 紅 ・ 薄紅 ・ 青 ・ 黄 の五色の花が咲き誇り、枝からは下向きに咲くという

八重梅に育った。

B 天狗のタモの木

樹齢数百年のタモの木には、天狗が棲みついているという。付近の入り江から

千田村の入り江まで一足でまたいだという。今も傍らに祠がある。

C 大浦ぐろの提燈火(今の金腐川にのこるお話)

毎晩、、九時、十時頃になると、ちょうど人が提燈を腰にぶら下げたくらいの

高さに、つつつ、つつつと人が歩く速さよりも少し速く、河北潟の方へ向かって

大浦ぐろを通う燈火が見えたという。 燈火は人が近かずくとぴっしゃりと消えて

しまい、その正体を見た者がいない。松の根元の祠に棲む化け物のしわざで

あるともいわれ 又 大浦ぐろで餌をあさる化け鷺の頂頭部が、夜になると赤々

と燈火のように光るからだともいわれている。

D ながたぐろの金馬(今の柳橋川にのこるお話)

毎年大晦日の晩になると、ながたぐろを上流に向かってつっ走っていく裸馬

があった。 この裸馬に飛びつき、尾っぽの毛一本でもよいから触れると、

金運に恵まれ大金持ちになれるという。このことから、ながたぐろを走る裸馬

のことを ”かねんま(金馬)” というようになった。

この金馬の正体は、昔、白尾の三郎兵衛という豪商が、船に乗って香々の首長

へ金銀財宝を貢ぎ物として献上する途中、大場の佐那武神社付近で暴風雨

にあつた。船は財宝もろとも水底深く沈んでしまったが、沈んだ財宝が、神馬・

金馬となって駆けるのだという。