Vol.3  空中戦  2011/09/23

 
 
測量の基本は巻尺と写真だと思っていますが、写真は空中写真のことです。
ほとんどの方が利用している地図の類はホボ100%
空中写真からトレースされた 「図」だと答えることができるでしょう。
空撮と言う方が聞こえが簡単かもしれませんが、
何がともあれ飛行物体が無いと話になりません。

 
HexaKopter  私のような個人レベルで飛行物体を準備できるのは バルーンだとかラジコンヘリ、飛行機ですが・・一番簡単なのは実際に航空機をチャーターすることです。 ただしそれでは航空機の予約だの費用だの計画だので毎回のフライトに身軽さがありません。 なによりもそれでは私が面白くありません。
 結果的に私が選んだのはラジコンヘリです。飛行経験が皆無な人間が安全にホバリングなんてできるのか?・・ と言うと普通はムリです。 しかしそう言うイメージはちょいと昔のことで、 今では自動で姿勢を制御する電子回路やセンサーの類が、とんでもないほど進歩していて 安価に手に入ります。しかもバッテリやモーターも高性能なので、驚くほど軽量になっています。
 そんなことから安全性も簡単に確保しやすくなっています・・・実はそれが大きな決め手でした。




カメラマウント  実は5〜6年も前からラジコンヘリの製品情報には 興味があったんです。但し、それもこれも写真測量のソフトだとかが 我々のような一般個人で扱えるようになってからの話です。それに付け加えて、 手放しでホバリングの可能な機体が撮影には必要です。 今年の春先にネットでみつけたこのドイツ製の機体。見るからに普通のヘリとは違ってUFOチックですが ちょっとネットで調べてみると、世界的にはたくさんのメーカーや種類がでてきます。4軸とか3軸ダブルの6ローターとか。
 私が選んだのは「完璧!」とは言えませんが6ローターでGPSコントロール機能が搭載されていてそれなりに 懸架能力(ペイロード)があるMikroKopterです。国内には輸入代理店が博多にあったので トレーニングセミナーに即決で行って購入につながりました。
 しかし購入直後に発覚したカメラマウントと撮影用のカメラのミスマッチ。これではいけません。 と言うことでスッタモンダ自作を経て試作してしまいました。




自作マウント  金属加工やプラの成型なんてのは 素人なので非常に苦労しましたが、それは理系男子なので試作の楽しいところを満喫しました。 結果、試作としては上出来なアルミのマウントが完成しました。事前の3DCAD製図のお陰で 手板金のレベルでも誤差が最小に抑えられて、サーボの動きも上手く連動できています。
 実は、キットの組立てから行って、あらゆるトラブルに対処できる要素を 鍛えたかったのですが、いろんな事情で実現に至っていません。 なのでせめてもの思いで、一度機体を丸裸にして基盤の隅々まで組立てのシュミレーションをやって ついでに余計な部品は外して軽量化をすすめました。
 一般的にはプラスチックやナイロンだとかの樹脂は軽量なイメージですが、 メーカーの都合と言うか成型のしやすさで採用されている事が多いので、 意外にミスマッチで重くなってしまうことがあります。 例えば、本音では耐久性を得たい箇所に金属を使わずアクリルで代用してしまうと 補強のための部分が多くなってしまって、かえって重くなってしまうんです。 良いか悪いかはサジ加減やセンスによるので、判断は人それぞれなんですけどね。
 




空中写真 ↑クリックで別ウィンドウ表示
 
 一見すると上手くできたモノも動かしてみると 見えてくる不具合や改良点があるはずです。 とりあえず完成した機体を飛ばしてみました。シャッター回路やサーボの回路は既存の状態のままで 機能はするんですが少々手を加えて地味な軽量化もやっておきました。
 カメラはパナソニックのGF1を採用したので機体の懸架能力にギリギリで非力な感じがします。 しかし、画質を落とせるのであればカメラを変えるだけの事なので、そんなに困ってはいません。 採用理由は画質云々の前に、レンズ交換のできることで短焦点軽量レンズが装着できること。もちろん リモートシャッターが切れて、撮影画像のモニタリングシグナルを比較的に簡単に取り出せることが 必要条件です。そうなると現在の段階ではベストチョイスでないかと思っています。 今のところ・・ と言うのがミソで、製品の向上は各社早いので今の段階でベストをこだわりすぎると 時間が無駄になることが多いです。
 さて、実際に撮影した画像はRawデータで撮影後に画質を調整できるのが大きなポイント。 空撮と言うと特殊ですが、ハッキリ言ってヘリは三脚レベルのことなので目標の画質を得られなければ いくら上空で撮影したところで話になりません。 とりあえずは手っ取り早くカメラから直接記録されたサイズ4000×3000のJPGデータ。 ホボ無風の状態での撮影だったのでブレは全くなく傾きの補正も必要ないレベルでした。
 
空中写真 ↑クリックで別ウィンドウ表示
 
 GF1はハイビジョンのムービーも撮影することができるので 飛行状況の確認を簡単にチェックをしてみました。製品のカメラマウントではバランスが悪くブラブラと 振動していた状況が一変、完璧とは言えませんが試作の効果は大きかったです。
 機体のスペックでは5000mAhの500gリチウムポリマーバッテリで10分ちょっとの飛行が可能なんですが 10分もあればそれなりに撮影は可能、予備バッテリを8つもそろえてあればオペレーターである 私の集中力の方がヘロヘロになってしまいます。 今回のテストフライトでの撮影高度は概ね100〜150mほどでした。最大200mを超える高さまで飛ばしてみましたが さすがに100mをさかいにして、偏西風が機体を揺らし動画の確認ではかなりフラフラしてしまっています。 もちろん肉眼での機体状態の確認が基本なので80センチ程度の機体で100mも離れれば 方向がわからず、オペレーターの心境で言うと「不安感のケタが倍増」です。 無事に帰ってくるかが不安なのと、万が一の停止+墜落のイメージが頭によぎります。 そうなるともう電気のトラブルを知る私にとっては非常に心細く感じてしまいます。 基盤間をつなげているコネクタ・・・これらは万全ではありません。 一見するとつながっているんですが、細かい振動や経年劣化で電気的接点が弱ることが非常に多いんです。 そう考えると、飛行高度によらず人間の頭上をヒラヒラと飛ぶ・・なんてことは絶対できません。 せいぜいカメラアングルを考えて頭上飛行っぽく撮影するところで回避したい現実です。
 




空中写真 ↑クリックで別ウィンドウ表示
 
 飛行状況は実際に見ていただくのが早いのですが なかなか「三浦さん飛ばしてよ」とはお願いしにくいものです。それを見越して今流行りの(?)動画配信サービスを 利用させてもらいます。いわゆるYouTubeのアカウントを準備しましたので、そちらでご確認下さい。 そもそも写真測量の為の撮影機材としてラジコンヘリを導入したわけですが、動画の撮影で 予想外の視覚的効果が感じられたので本人が非常に驚いています。 測量と言うとエンジニアの系統・・・技術職としてのイメージが強く、お世辞にも芸能職に近いとはいえません。 身近にカメラマンがいらっしゃったり協力してくださる方がいたりするので センスの無い私にとっては非常に心強く感じております。
 一般的に「測量屋がラジコンヘリを・・」と言えば鉛直下方向の写真で図化するのが当たり前なんですが 私の写真測量の感覚ではナナメ撮りが欲しいんです。しかし、世のニーズとしてはそれが「当たり」なのかは 非常に疑問なので、果たしてこう言う技術は「生かせるのか?」が不安なところです。
 




事務所にて・・  写真はその被写体をそのまま記録してくれてます。 測量は一度主観をすてて現状そのままを数値化し作図するんですが、ときとして 主観を入れた絵となることも少なくありません。 なので測量の成果となる図と写真との主観の相違が出てくることも多くあります。 それが証拠にGoogleのMapとEarthを比較されると良く分かります。「おや?ここは?」と 「へー!」という箇所がたくさんないですか。
 空中写真を撮るとなると飛行物体の安全性を確保する労力が大きく 通常なら有人飛行機などをチャーターするのが無難でしょう。 さらに踏み込んでオハナシすると、過去に測量屋がラジコンヘリを買って空撮にトライした事が 何回あったでしょうか。私もそのうちの一人になったわけですが、 しかしその先輩方の環境とは大きく異なります。
 ラジコンヘリと言うとほぼ100%の方が思い描くシルエットは例のヘリコプター・・ 大きなローターがバラバラと音をたてて飛び上がる大きな機体。 それと比較すると私が選んだ機体はかなり小さく軽量で非力です。ヘリと言うよりUFOです。 そうなんです、勘の鋭い方ならお分かりかと思いますが道具としての軽快さが売りです。
 実は、アイドリング程度のローターに指が接触しました。当然傷はそれなりに深く出血も多いです。 しかし縫う程の裂傷には至りませんでした。 幸い・・と言うか事前に自ら体験できてすこし安心しましたが、 恐らく普通のラジコンヘリではかなり危ない結果になっていたことでしょう。

 
 
また久しぶりに大きな買い物をしてしまいました。
使いこなせるか?ニーズはあるのか?などと言う心配が無いわけではないです。
しかしそう言う心配ばかりでもなく、新しい技術に対する好奇心もあったので
ちょうどいいタイミングだったのかもしれないと思っています。
当面、操作習熟期間が必要なのでテストフライト環境を探しています。
質問、意見、依頼などありましたら 電話でもメールでもお待ちしております。
ありがとうございました。   (三浦 大)

 

copyright(C)2002 miura_surv@web All Right Reserved.