日本アニメの源流  〜 国宝 信貴山縁起絵巻 〜

山崎長者の巻

米倉が空を飛び、そして米俵が舞い戻る、摩訶不思議な驚愕の物語

飛鉢の法力を持つ信貴山の僧命蓮が托鉢のために、山崎の長者に飛ばした鉢を倉に放置したことで、鉢は米倉ごと信貴山まで運んでしまう。困り果てて追いかけてきた長者の訴えに、命蓮は倉は山に残し、米俵だけを返すことにする。

目の前に起こる奇跡に慌てふためく人々の反応が生き生きと描かれている。また、紅葉や鹿などの自然描写も見事である。

山崎長者の巻 31.7×879.9p
延喜加持の巻 31.7×1290.8p

延喜加持の巻

命蓮は都へは行かず、信貴山中で加持祈祷をし、帝の病を平癒させる

延喜の帝(醍醐天皇)が重い病に苦しみ、いろいろと手を尽くしてもなかなか快方にはむかわない。そんなとき、飛鉢をはじめすぐれた法力を持つ命蓮の話が聞こえ、帝平癒の加持祈祷を行うよう、都に出向くことを要請するため、勅使が遣わされる。

しかし、命蓮は信貴山にとどまって加持祈祷を行い、その霊験成就のあかしとして、剣の護法童子を差し向けるという。そして、約束通り剣の護法童子が帝の前に現れ、めでたく帝は平癒する。しかし、その褒賞にと使者が持ち出した僧位や荘園などを、命蓮は固辞する。

尼公ノ巻

故郷信濃国から尋ねて来た、姉の尼公と命蓮は再会し、ともに信貴山で修行に励む

若いときに信濃国を離れ、奈良へ仏道の修行に向かったまま消息のない弟を捜し尋ねて、姉の尼公が奈良へ旅立つ。長い旅路の中で、折々に出会う人々に弟の行方を尋ねる尼公。東大寺大仏殿での一夜の祈りが聞き届けられ、大仏のお告げにより信貴山にたどり着いた尼公は、念願の再会を果たす。その後、尼公は信貴山にとどまり、弟命蓮とともに修行にいそしみ、余生を幸福に過ごすのであった。

東大寺大仏殿での場面は、異時同図法により、異なった時間の場面が同一画面に描かれて強い効果をあげているが、この場面はまた創建当初の大仏殿を伝える貴重な記録ともなっている。

尼公ノ巻 31.7×1424.1p
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