これまで他院での手術指導も含めて約80例の代用膀胱造設術の経験がありますが、当科ではこの十年間で約50例実施しました。膀胱摘出も含めた平均手術時間は7時間30分で平均出血量は800mlでした。膀胱摘出に関しては2014年から腹腔鏡下膀胱全摘術を、2018年からロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘術を行っています。輸血はほぼ不要となりました。
代用膀胱造設術とは?
膀胱癌などのため膀胱を摘出すると、自分の尿道からの自然な排尿ができなくなります。そのためこれまでは右下図のように下腹に穴を開け、採尿袋に尿を排出させるような手術(尿路変更手術)を行っていました。
そこで下図のように、自分の腸(小腸の約60センチ)を利用して膀胱の代わりとなる球形の袋(代用膀胱)を作成し、それを自分の尿道とつなぎます。最初は100〜200ml程度の小さい膀胱で尿漏れなども起こりやすいのですが、術後3〜6ヶ月くらいで400ml程度の膀胱になります。
女性は尿道が短かく術後排尿障害を生じ易いのですが、これまで当科で実施した4例の女性患者のうち1例は術後半年ほどで排尿困難を認めましたが、3例は失禁、排尿困難ともにありませんでした。左図は当科で代用膀胱造設術を施行した男性患者(写真掲載は患者さんの許可を得ています)の下腹部の状態です。当然ですが。採尿袋はなく、快適な排尿状態を保っています。
しかし、常に下腹部に尿を集める採尿袋を貼っておく必要があり、生活上も美容上も不便を感じることが多いのも事実です。
そして尿道からの自然な排尿ができるようになるのです。この手術を代用膀胱造設術といいます。