臨床泌尿器科(60巻13号1023ページ 平成18年12月) 『病院めぐり』
砺波市は富山県の西南部に位置する人口5万人の小さな田舎街です。のどかな田園風景が広がる砺波平野には、緑豊かな屋敷林に囲まれた家々が平野一面に碁石を散りばめたように点在しています。春には市の花でもあるチューリップのカラフルな色、夏は緑色、秋は黄金色、冬は一面銀色となるこの美しい散居村の中で、最も近代的な構造物が市立砺波総合病院です。現在病床数514床、常勤医師93名(うち臨床研修医14名)であり、砺波市を含む砺波広域医療圏(人口15万人)の中核病院として機能しています。
泌尿器科は、三崎俊光(S44卒)江川雅之(S62卒)新倉 晋(H8卒)の3人体制で診療を行なっています。いずれも指導医であり、忙しくも上手く仕事を分担して日々の診療をこなしています。外来は木曜日のみ1診制、他の曜日は初診/
再診の2診制で一日平均50名ほどの患者さんを診察しています。午前中に病棟係の医師がESWLも行なっています。手術は月/水/木で、木曜日のみ朝から手術を開始しています。どんな手術でも5時頃までには終了し、医師以外のスタッフからも喜ばれています。火曜日午後はカテーテル交換と予約検査を、金曜日午後はできるだけ予定をいれずに勉強会や書類整理等にあてていますが、なぜか週末には緊急処置を要する紹介を多く頂き、なかなかゆっくりさせてもらえません。
昨年は、外来新患2128名/入院478名、手術件数248件(生検や外来小手術除く)でした。手術の内訳は、TURP35例、TURBt58例、TUL24例、PNL6例、被膜下前立腺摘除5例、前立腺全摘14例、膀胱全摘10例(回腸新膀胱7例、回腸導管1例、尿管皮膚瘻1例、腎瘻1例)、腎・腎尿管摘除20例などでした。H16年に腹腔鏡手術技術認定を取得していますが、昨年度は腹腔鏡下腎・腎尿管摘除14例、腹膜鏡下副腎摘除4例を行ないました。またESWLは延べ289回施行しました。
本年度からは、心臓血管外科医が不在となった影響で内シャント手術が復活、またメッシュを用いた骨盤底再建手術を開始した影響もあり、さらに忙しくなるのは必至の状況です。
当院は伝統的に学術活動に対する理解があり、学会発表(AUA等国際学会含む)や最新の手技を学ぶための研修参加等への暖かい支援を頂いております。現在当科では、センチネルリンパ節に関する臨床研究を行なっており、倫理委員会の承認と患者さんの承諾を得て、前立腺癌における拡大郭清や郭清省略について検討を行なっています。また今年度から女性のための骨盤底(機能)再建外来を立ち上げました。昨年までは、大腸肛門科、産婦人科、泌尿器科が別々に骨盤臓器脱(膣脱および直腸脱)を治療していましたが、膣/直腸からの脱出性疾患では両者が合併することも多く、3科が合同で効果的な治療にあたれるよう日頃から検討会や勉強会を行っています。
こんな田舎に似つかない立派な病院とよく言われますが、中味も建物に負けないよう日々努力を惜しまないようにしています。H18年6月には当科ホームページを立ち上げました。診療内容や休診案内だけでなく、手術手技の動画等もupしています。患者さんへの情報提供だけでなく同業者からも好評です。
(江川雅之・記)